Initiation love 67 ページ17
side山田
山「知念…あのさ、疲れてる所悪いんだけど、部屋に行く前にちょっと寄り道していい?」
知「うん。僕は別に構わないよ…」
俺は皆と別れた後、知念の手をギュッと握ると、近くにあったエレベーターで最上階まで上がった。
知「涼介…どこに行くの?」
山「圭人とね、知念の部屋を探してる時に見つけたんだ。ここの階の端に小さな展望ルームがあるの。今ならまだ星が…あっ…しまった…」
大ちゃんの健康診断などでバタバタしていたせいで、思っていたよりも時間が経過していたらしい…
外の景色は真っ暗というより、濃紺から徐々に明るくグラデーションがかかったような色をしていた。
知「…もうすぐ夜が明けそうだね。お日様がでかかってる。でも綺麗…」
俺が想像していた満点の星空ではないが、今にも夜が明けそうな空はそれはそれで美しい姿を俺達に見せてくれた。
暫くその夜空を静かに見つめる知念。
その横顔を見つめながら俺は伝えたかった想いを改めて言葉にする決心を固めた。
山「知念…俺ね…」
束の間の沈黙を破る様に、俺は静かに話しだした。
山「ここ最近、知念の様子がおかしいのは知ってた。でも、俺が頼りないから話してくれないのかなって考えたら聞けなくて…」
知「違うっ。涼介は悪くないっ!僕が…言い出さなかったから…」
山「ううん、いいんだ。今の俺は頼りない。それは紛れも無い事実だから…
だってまだ学生で、ただ知念の事が好きって気持ちだけで…
ずっと一緒にいたいなんて言っておきながら、先の事なんて全然考えてなかった。
現実の今が幸せであれば、それがずっと続くって…そう漠然と考えてた。
それにね、俺は怖かったんだ。
俺の知らない知念の一面を見る事が…
好きだからなんでも知ってるって思い込んでて、そうじゃない現実があるって頭の隅ではわかってたのに、目を逸らして…
俺って本当に弱い人間だと思う。
だから、今日のことがあって、俺は知念に相応しい人間じゃないって…正直思った…」
知 「そんな事ないっ!僕は…涼介じゃなきゃヤダ。涼介しか…僕のこと幸せに…できないんだから…」
知念の瞳からはハラハラと雫が流れ落ちていた。
山「ごめん。泣かせて…。でも、もう少しだけ続き聞いて…」
俺は少しだけ屈んで知念に視線を合わせながら、瞳からこぼれ落ちる涙を指先でそっと拭った。
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作者名:黒猫ボス | 作成日時:2017年10月19日 0時