そんな僕らの日常生活9

Initiation love 25 ページ25

side薮

薮「社長に会わせてよ。もしくは侑李に。いるんでしょ？ココに…」

秘書「社長は只今お取り込み中ですので、お隣のお部屋でお待ちください。
それから侑李様は現在、美咲お嬢様と共に前夜祭のためのお支度中ですのでどなたにも会わないとの事です。」

薮「見え透いた嘘ついてんじゃねーよ！いいからさっさと…」
秘書「誠に申し訳ありませんが、宏太様が何と言おうと、社長からは隣でお待ち頂くように仰せつかっておりますのでご了承下さい。」

何処までもお堅い秘書に俺はイライラしながらも、俺は案内された隣の部屋のソファに腰を下ろした。

知念にまで会えないとは…

さっき姉貴が来た時に侑李を無理矢理にでも美咲嬢から離す様に頼めば良かったと今更ながら考えてしまう。

だいたい、姉貴も引っ掻き回していいなんて言っておきながら何の協力もしてくれそうにないし…

そりゃ、光の事をずっと紹介しなかったのは悪いとは感じてたけれど、そんな事をしたら爺さんが光に干渉してくる可能性があったから極力本家との接触を避けていたのだ。

跡継ぎ云々は侑李だけでなく、俺自身も幼い頃から言われていた事だったし。

それが、まさかこんな形で跳ね返ってくるなんて…


光には大丈夫なんて言ったものの、正直あの頑固な人が侑李と山田の事を簡単に認めるとは到底思えない。
だいたい、婚約発表の場をこんな海の上でやる事自体、周りからの横槍を入れさせない為の作戦であることは明白だった。

相手は日本屈指の製薬会社トップ。
悔しいが、俺ではまだまともに戦っても勝ちめはないだろう…

たくっあのジジイ、人の人生なんだと思ってんだよ…
俺らは跡継ぎ作るための道具じゃないっつーの！！

頭をフル回転させても良い案が浮かぶ訳もなく、出てくるのは爺さんに対する愚痴だけだった。




＊＊＊

…にしても遅い。いつまで待たせんだよ。

薮「ねぇ秘書サン、もう30分は待たされてるんだけど…」

そう俺が言葉を発した瞬間、扉がガチャリと開く音が聞こえた。

祖「おぉ、来ておったか…この親不孝ものめ！」

薮「別に親でもない爺さんにそんな事言われる筋合いないんだけど？」

祖「小さな頃から目をかけてやったのに…ワシの期待を裏切りおって！」

薮「そっちが勝手にした事だろ？俺には俺の人生があるんだよ！
それに、侑李だってそうだ。あいつの幸せとかちゃんと考えてる？
こんな政略結婚みたいな事させて…
侑李の気持ちはどうなるんだよ！」

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