そんな僕らの日常生活9

Initiation love 17 ページ17

おじいちゃんが怒るのも無理はない。

僕は知念の長男で、跡取りで…

この先きっとこの会社を継いでいく事を望まれた存在。


別に一族経営にしなくても、実力のある人がトップをやればいいと僕は考えてるけど…

おじいちゃんの考えはまるで違っていた。

どうしても一族に継がせたいみたいで…

一時は宏太を養子になんて話もあったぐらいだ。
血の繋がりはないけれど、宏太もおじいちゃんのお気に入りだったから。


でも…そんな宏太が光君と結婚した。


それこそおじいちゃんにとっては不測の事態だったのだろう。
二人の事をどこからか聞き付けると、何度も宏太を本家に呼び出していた。

が、宏太はそれに応じずに光君との生活をいつも通り続けていて…



そして、宏太の事を漸く諦めたかと思ったら今度は僕の婚約話が急に進んでしまった。
勿論、おじいちゃん自身が体調を崩したのも要因ではあったのだろうけど。


美「そんな…
誰です！？侑李様の心を盗んだのは…絶対に許しません！」

祖「侑李…お前はワシの唯一の孫じゃ。行く行くはC製薬を背負って立つ者になるのだよ。それが…」

知「僕には彼がいないとダメなんだ！彼と一緒じゃなきゃ…」


トントントンッ

秘書「社長、お話中失礼いたします。J商事の専務がご挨拶されたいとの連絡がありましたが…」

祖「分かった。
侑李、美咲さん、今後の事は2人でよく話し合いなさい。
ワシはちょっと席をはずすから…」

知「おじいちゃん、2人で話す事なんてもう無いから。僕も自分の部屋に戻るよ！」

祖「侑李…もう少し美咲さんの気持ちも考えてあげなさい」

知「そんな…じゃあ僕の気持ちはどうなるの？
僕は涼介と…あっ(しまった名前！！)」

美「侑李様のお心を奪ったのは"涼介さん"なんですね？」

美咲ちゃんの顔が一気に険しくなる。

知「違うって…」

慌てて繕った所で嘘である事は明白で…

そんなやりとりをしている間におじいちゃんは部屋を出て行ってしまった。


美「そう言えば、先程侑李様をお迎えに上がった時にいらしたご学友の方の1人が確か"涼介"でしたわね。

あの方ですか…侑李様のお相手というのは？」

一瞬暗い影を落とした表情の美咲ちゃん。



何か…

何か嫌な予感がする。




涼介…今何処にいるの？

まさか、宏太が連れてきてたりしないよね？



ザワザワと心が騒めき立つ音が聞こえてくる。


突如として湧き上がった言い知れぬ不安に、僕はギュッと自分自身を抱きしめたのだった。

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