Apple blossom ページ3
.
ある日20歳の誕生日の数日前に、事務所から呼び出しをされた。
なにか大事な話があると思い急いで事務所に向かうと代表が待機をしていた。
｢遅くなってすみません。｣
外の気温は低くなってきたはずなのに私の体には汗が滲み出る。
もしかして私、何かしでかしたのだろうか？
信頼を失う様なことをしただろうか？
最近の出来事を脳裏に巡らせ席に着いた。
｢大丈夫だ。急に呼んでしまってすまないね。｣
｢いえ。…何かあったのでしょうか？｣
私がそう尋ねると代表が一息吐いた。
｢実はな、先日Aから貰ったデモをたまたま社長が聴いたんだ。｣
話を聞けば、私の歌声を聞いた社長が｢我社にこんな歌が上手い歌手がいたか？｣と代表に尋ねたそうだ。
それに対し代表は｢彼女は我社の作曲家です。｣と答えると、社長は｢勿体ない。｣と言って私に歌手デビューを勧めたいと仰ったらしい。
｢私が…歌手ですか？｣
今まで考えた事がない選択肢に戸惑いを隠せずにいた。
いや、一度だけ考えたことはあった。
でもそれは歌手では無くアイドルと言う少し違う方を。
韓国はアイドルから歌手になる流れが一般的である。
そんな私も韓国で歌手になる夢を見た時もあった。
でも練習生になって自分が団体行動が苦手な事に気づいた。
練習生時代に見てきた女の子のイザコザは、傍から見ていても面倒に思うほど複雑だったから。
尚且つ女の子の喧嘩は厄介極まりない。
一度喧嘩してしまえばずっと仲が悪いなんてざらである。
だから私は、複雑な団体に深入りせずに音楽に関わることが出来る"作曲家"を選んだ。
でも"歌手"はアイドルとは違う。
個人で自分を優先して活動できる。
でも韓国で歌手活動をして人気が出るのはひと握りだけ。
…と考えると、中々出しにくい一歩である。
｢どうだ？興味はあるかい？｣
｢あるにはあります。ですが…｣
｢"ですが"？｣
私の声は人気が出るだろうか。
売れなければ事務所にとっては荷物になる。
｢私の歌声はきっと話題に上がらないと思いますよ。｣
そう私が言うと代表は黙り込んでしまった。
体感にして1分前後の沈黙後に代表は口を開いた。
｢歌手になって売れろとは言わない。｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 862人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうな
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b115645c0f1/
作成日時：2022年10月13日 15時
