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崇裕に連れられて、病院の屋上に来た。
心地よい風が吹いていて、崇裕は気持ち良さそうに目を細め、風に靡く髪をかきあげた。
面会時間は終わっているのにいいのかと尋ねると、怒られるのは俺やからと変わらない笑顔を俺に向けた。
「久しぶりやな」
「ああ、久しぶり…」
ぎこちない話し方になってしまうのは仕方がないと思う。
まさか、電話を掛けて今日会えるやなんて思ってもみんかったから。
あの頃よりも痩せ細ってしまった身体を包んでいる大きな白い病院服が、崇裕の健康的な色の肌を浮かせていた。
「なんで、ここに居ることを？」
「…引っ越そうと思って部屋を片付けてたら、色々懐かしいもん出てきてさ。気付いたら電話掛けてた」
「電話？俺、電話なんて来てへんよ」
「照史さん、が出た」
「俺がトイレ行ってる間に電話勝手に出たんやな」
勝手なことを、と言いながらも顔は嬉しそうやから、照史さんのことを信用してるんやな、と二人の関係を突き付けられる。
違う、俺は崇裕とどうにかなりたいわけじゃないやろ。
そう自分を丸め込んで、崇裕の横顔を見つめた。
変わらず綺麗なその顔は、ふと俺を見た。
「…来たらあかんやんか」
「…ごめん。気になって」
「……こんなんじゃ、別れた意味が無くなってまう」
「へ……」
崇裕は優しく俺の手を握った。
温かい。
崇裕の、大好きやった...ううん、今でも大好きな手。
この優しさに甘えてしまった俺を、変わらず優しい手で包む。
崇裕の綺麗な顔を見つめると、眉をひそめた崇裕の目から大きな粒が零れ落ちるのが、ぽつ、と寂しく立てられた1本の電灯に照らされて、宝石のように見えた。
「……また会ってしまったら……、今度こそほんまに死にたくなくなってまうやんか……」
そう言って、崇裕は困ったように笑った。
吐き出された言葉に理解が追いつかず、呆然と崇裕を見つめるだけの俺は、柔らかい風に吹かれてふわふわと額を撫でる髪の毛に擽ったさを覚えた。
「死にたくなくなる、って…どういうこと？」
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作者名：ひなこ | 作成日時：2022年12月17日 22時
