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手術から数週間が経った。
成功したものの、崇裕はもうベッドから出ることすら出来ひんくらい病状は悪化してた。
「今日も帰らんの？」
「うん。なんかあったら困るやろ？」
「本音は？」
「……崇裕と離れたくない」
「可愛い」
崇裕はそう言って、窓の外にぽっかりと浮かぶ満月を見た。
薄く伸びた雲が月明かりが部屋に届くのを邪魔するのを、崇裕は手を伸ばして掴もうとしてた。
「あんな風に、神様はいっつも俺の未来を邪魔するなぁ」
「はは……」
「望、ほんまにありがとう。望がおるから、……今の俺がおる」
そう言って、伸ばした手を下ろして俺の手を握る。
「なんやねん、急に改まって」
「ううん、何となく。……………なぁ、もうすぐ春やな。……花見がしたいな」
「うん、しよな」
「夏は、この間みたいに…海行こう。望が言ってたように……花火も見たいな」
「うん、海で花火すれば一石二鳥やん」
「そうやな。秋は……なんやろ」
「美味しいもん、いっぱい食べたいな」
「そうや、食欲の秋や。……冬は、スノボーしたいな…。あのマフラー、付けてさ」
呼吸器の隙間から聞こえるシューッと言う音に負けそうなか細い声で、崇裕が必死に紡ぐ言葉を掬いあげて受け止める。
俺の手を握る崇裕の手は、骨張って少し薄くなっていて、溢れる涙は止まらなかった。
きっと、もう崇裕は長くない、それをひしひしと肌で感じてたからだ。
「付けよな。今年は手袋とかも、お揃いのやつ買おう」
「ふふ………楽しみやな…」
「いやや、崇裕、目閉じんといて」
「大丈夫、ちょっと疲れただけやから……すぐ、起きるよ……」
「崇裕、俺のこと見て……！大好きやで……！」
まだ熱の残る崇裕の頬に触れると薄くなった瞼を持ち上げた崇裕と目が合う。
綺麗な目してるなぁ、崇裕は。
あの時から、ずっとそう思ってた。
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作者名：ひなこ | 作成日時：2022年12月17日 22時
