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それ以来、崇裕のことは見ていない。
幸か不幸か、崇裕が俺に一目惚れして、猛アタックの末付き合ったから、共通の友達と呼べる人もいなくて、現状を尋ねることも出来ひんかった。
ーーーほんまは大好きやった。
離れたくなかった。
大人にならないとと思う反面、あの時もっと子供になれてたらと後悔することがある。
あかん、3ヶ月も経つねんで。
そう思っているくせに、俺は記憶を頼りに崇裕の電話番号を携帯に打ち込んでいた。
心と体は一致しないというものを初めて体験させられた気がする。
いいねん、声が聞けたら。
元気でいることを確認出来れば、それで。
崇裕が出るんやろうか。
携帯ならそれもそうか。
いや、崇裕が言ってた好きな人とやらが出てくれた方が素直に諦めがつく。
呼び出し音が、小さな段ボール3つ分に収納された俺の荷物がぽつりと置かれた殺風景な部屋に響いて、やけに長く感じた。
……………出ぇへんか。
それならそれでいい。
もうあの頃にはどうしても戻られへんなら、一生輝いたままの思い出にするのも悪くない。
そう自身に言い聞かせた時やった。
『もしもし』
電話から聞こえたのは崇裕よりも少し高い男の声だった。その声にたまらず胸が締め付けられる。
好きな人って、男やってんな。
仕舞ってたはずの悔しさやら悲しさやらがぶわりと湧き出して、返事をすることすら忘れてしまっていた俺を、その男が呼んだ。
『望さん…ですか？』
「！…なんで、名前」
『はじめまして。俺、崇裕の友達の桐山照史って言います。崇裕から色々話は聞いてて…登録名がそうやったから』
「あ、そう、……なんや」
"友達"という名詞に酷く安心感を覚えた自身に呆れ返る。
なんやねん、今日の今日まで忘れてたくせに。
自身に悪態をつくとジワジワと崇裕との思い出がまたひたすらに蘇り、過去の俺が顔を出す。
ーーー違う、ほんまは。
忘れてたんじゃない、忘れなあかんかった。
崇裕が最後に言った、「俺のことは忘れてな」って言葉を聞いた時に、俺との思い出は無かったことにしたかったんやって何度も何度も泣いた。
こんなにも好きやのに、こんなにも崇裕しかおらんのに、崇裕はそれを忘れてと言う。
忘れる他なかった俺は、きっと"�霤朕鰺�"という存在に、自身で蓋をした。
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作者名：ひなこ | 作成日時：2022年12月17日 22時
