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桜の花びら九枚 ページ10

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私が産まれてすぐ両親が交通事故で死んでしまった。もともと孤児の母と父が出会って結婚したから頼れる親戚もおらず残されたのは私と兄二人だったのだ。八つも年の離れた兄は学校にもいかず新聞配達などでお金を稼ぎつつ私の面倒を見てくれた。




でも、私は生まれつき体が弱く五歳の時に病気の症状が目立つようになった。
毎日のように襲い来る発作を見兼ね兄は私を病院に入院させた。




『お兄ちゃん。御免なさい私の所為で……』


「Aが謝ることなんてないさ。兄ちゃんが沢山稼いでAの病気を治るよう頑張るからな」




兄は優しかった。病気の入院費と手術費を稼ぐ為毎日毎日働いてお金が溜まれば病院に支払っていた。そんな兄に私は申し訳ないとそう思っていた。




私は5歳からずっとこの病院で過ごしていた。兄は自分の人生を私の為に使ったのだ。








そして私が18歳、兄が26歳の時。
____兄は私の前から消えた。
病院への支払いは一切を途絶え、私自身動かせない体はお金を稼ぐことなんて出来やしない。




何故兄が私の前から消えたのか。判っていた。そしてそれは仕方ないことだとも今でも思っている。13年間だ。まだ若い兄が学校に行かずお金を稼ぐ為に朝から晩まで働き続ける。自分の為ではなく、病気を持っている(わたし)の為に。



優しい兄。大好きだった兄。
そんな兄をずっと苦しめていたのは_____私。






月日は流れ私は病室を移動した。
移動した病室からは一本の木が見えた。それは生まれて初めて見た桜いう名の木。
ヒラヒラと風に舞って飛んでいく花びらが自由に飛び回っているみたいで_______羨ましいと感じたのだ。







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月華桜(プロフ) - リーザさん» コメント有難う御座います!楽しみにして頂けているなんてとても光栄です!これからも応援よろしくお願いします! (2019年5月12日 16時) (レス) id: dc051cccc9 (このIDを非表示/違反報告)
リーザ(プロフ) - コメント失礼致します。いつも月華桜さんの作品楽しみに読ませていただいております。とても綺麗な文章で、更新される度に感動してしまいます。これからも無理のないよう更新頑張ってください。応援しています(´∀`) ( (2019年5月12日 15時) (レス) id: 0dd43e413c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月華桜 | 作成日時:2019年5月8日 20時

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