桜の花びら二十一枚 ページ22
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Aの首筋から唇を離した中也は数秒Aの瞳を見つめた後、今度は唇を奪った。
開かれた唇の隙間から舌を入れて奥で縮こまる舌を優しく掬い取るように絡める。
溶けるように熱い舌。Aの微かな息遣いさえも飲み込みたくて抱き寄せていた手を彼女の後頭部へと添えた。
『んっ……んっ……』
応えようと必死に絡めてくるぎこちない舌。
それでも、中也にはそんなAが愛おしくて堪らなかった。
漏れる彼女の声が更に中也の理性を奪っていく。
だが、流石にこのままじゃ息が持たなそうなAを見兼ね中也が名残惜しくもそっと唇を離せば、二人を銀の橋が繋いでプツリと切れた。
『はぁ……はぁ……』
頬を染め荒い息遣いのAが官能的でもう一度その唇に食らいつきたくなった中也であるが何とか耐える。
「悪りぃ。止められなかった」
『い、いえ!私も、その……』
首の裏を掻きながら目を逸らした中也にAも赤い顔のまま俯く。
A自身も中也との接吻に夢中になっていた事を改めて気づき恥ずかしさに言葉が続かない。
なんとも云えない雰囲気に耐えられなくなり中也が「戻るか」といったことにAもこくこくと頷いたのだった。
部屋に戻ってからも二人は赤い顔のまま。
ベットに入ってAは窓の外を見つめ、中也は飾られた花に視線をやっていた。
会話のない沈黙。窓から聞こえる蝉の声だけが辺りに響いていた。
Aは暫く外をボーッと見ていたがふと桜の木を見る。
『あ、えっと……桜!また、咲きますかね?』
「あ?……ああ、桜な。来年になりゃあ咲くだろ」
『そうですよね。』
来年か……。Aは声には出さず心の中でそう呟いた。
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月華桜(プロフ) - リーザさん» コメント有難う御座います!楽しみにして頂けているなんてとても光栄です!これからも応援よろしくお願いします! (2019年5月12日 16時) (レス) id: dc051cccc9 (このIDを非表示/違反報告)
リーザ(プロフ) - コメント失礼致します。いつも月華桜さんの作品楽しみに読ませていただいております。とても綺麗な文章で、更新される度に感動してしまいます。これからも無理のないよう更新頑張ってください。応援しています(´∀`) ( (2019年5月12日 15時) (レス) id: 0dd43e413c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月華桜 | 作成日時:2019年5月8日 20時