誤解 ページ42
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今日はオフで、朝から一通りのトレーニングを終えた後、すぐ自宅に戻った。
雨が思いの外降っていて、今日は自宅にこもろうとコーヒーをカップに注ぐ。
のんびりチームから送られてきた動画を見ていると、外で女性の声が聞こえた気がした。
思わずイヤフォンを外したけど、もしかして俺、Aちゃんの声が空耳で聞こえた?
マジでいよいよヤバいよ俺、と思いながらもう一度イヤフォンをつけようとすると。
「…やっぱAちゃんの声じゃん」
ドアの向こうで、今度はAちゃんの声がはっきり聞こえた。
デート、早く終わったのかな。
会いにきてくれたのかな。
なんて思いながら浮き足立って、なるべく急いで玄関に向かった。
「Aちゃん?チャイム鳴らしてくれてもいいのに……………
………………エレナ?」
浮ついていた気持ちは、ドアの向こうの光景を目にして一瞬でなくなった。
『ユウキ!!』
突然首に回される腕と、甘ったるい香水の匂い。
何のことかわからず動けずにいると、エレナのブロンドヘアの奥で、立ち尽くすAちゃんの姿が目に入った。
ひどく混乱したような、哀しそうな顔をした彼女は、何かを言おうと口をパクパクさせた後ゆっくりと閉じた。
そして
「…お友達に、なって。エレナさんと。
ボーイフレンドが日本人だって、だから会わせたいって。
……石川さん、だったんだ」
Aちゃんの目にゆっくりと水が溜まって、それを溢さないよう視線が逸らされた。
「ちがっ、Aちゃん、違うから。説明させて」
その表情を見て我に帰った俺は、弁解しようと首にまとわりつく腕を振り払う。
するとエレナは俺を一瞥した後、Aちゃんに向かって「私のボーイフレンド、ユウキ」と、拙い日本語でそう言った。
「A、フレンドだった?ユウキ」
「Aちゃん違うから、ちゃんと「初めまして」
「ユウキさん」
そんな声で、呼ばれたいんじゃない。
そんな表情で、見られたいんじゃない。
「まって、Aちゃん!」
『ユウキ、行かないで』
右手にまとわりつく腕に阻止され、走って出て行く姿を追いかけることができなかった。
外は、雨だった。
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時