叶う時 ページ38
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_______気になる人、いるし
その言葉が頭の中をぐるぐる回る。
突拍子もない言葉を言われると、人はこうやって思考停止するんだな、なんて呑気に考えた。
目の前の彼女はなんでもない顔をしているようで、でもやはり若干頬が赤い。
"気になる"という言葉に他意はあるんだろうか。
人として、気になるのか。それとも…それとも?
他にどんな選択肢が?
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「…何フリーズしてるんですか」
「あっ、いや、えーーーーと…」
目の前で手をヒラヒラ振られるけど、やっぱり頭は追いついてこない。
俺が同じ言葉を告げた時、Aちゃんもこんな気持ちだったんだろうか。
じゃあ、ひどく混乱しただろうな、なんて思う。
「気になるって、どういう?」
「気になるは、気になる」
「俺がバレーやってるから?結構Aちゃんのことからかったし、仕返し?」
冷静沈着、みたいなイメージを持たれたりすることもある自分だけど。
今この瞬間はすっごいダサいと思う。
目は泳いでるし、多分、いや確実に挙動不審。
摘み出されても文句は言えないくらい。
俺の様子にまたクスクス笑ったAちゃんは、「ほんとにプロアスリート?」と揶揄した。
「気になるんです。石川さんのことが。」
「…」
「異性として?…うん」
「…いつから?」
「んーー…そうだな……多分……
最初に会った時から」
ふふ、と優しく笑いながら、気恥ずかしそうに膝を抱える彼女の横顔を、俺はずっと見つめていた。
警戒心のない日本人だと、思った。
友達になって、面白い人だと、思った。
居心地が良くて、たくさん話したくて、話してほしくて。
コロコロと表情を変えるその姿の、その視線の先に、居たくて。
それが今、叶うかもしれない。
叶えたかったことなのに、いざ叶うかもしれないとなると、手にした時の脆さに、失う怖さに襲われてしまうのはなんでなんだろう。
控えめに手を差し伸べて、彼女の髪を1束掬い、耳にかける。
それに気付いて、俺にふわりと微笑みかけたその表情に、どうしようもなくなりそうだった。
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時