おやすみ ページ28
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「妹が熱を出し始めてから、梅雨でもないのに雨の日がずっと続いてた。異常気象だって」
「うん」
「だから思い出しちゃって…。私が、私があの日出て行かなければ、私が家にさえいたら、すぐ気付いてたら妹は…っ……っ」
鼻も目も真っ赤にして、嗚咽しながら泣いている彼女は、いつもの明るい姿からは想像ができなくて。
誰にでも過去はあるけど、あんなに魅力的な笑顔で笑うAちゃんに、そんな過去があったなんて。
本当に俺は何にも知らなかった。
食欲がなくなって、誰が見てもわかるくらい目の下にクマを作って。
そんなになるくらい、心が追いつかなくなることが彼女にもあるなんて、知らなかった。
俺のことを知って欲しいと思う。
でも、今は
Aちゃんのことが知りたい。
どうしたら涙を止めてあげられる？
どうしたら長雨の中、Aちゃんが悲しい思いをせず過ごせるようになる？
どうしたら、いい？教えて。
Aちゃんの肩に腕を回し、そのままゆっくり自分の方へ引き寄せる。
腕の中にすっぽりと収まった彼女。
好きでもない男にされるの、嫌だろうな。
でも、今はこのくらいしかできることないからさ。
許してよ。
「大丈夫。いるから」
「……っ」
Aちゃんは俺の胸におでこをくっつけて、泣きじゃくった。
俺はそのまま彼女の頭に顔を置いて、トントンとリズムよく背中を叩く。
「…ずっと後悔してたっ…幸せになるとかそんなのダメだって、妹を、苦しめたのにっ…」
「うん」
「だから、せめて妹のやりたかったことしようって…"いつかイタリアに行きたい、体が良くなったら姉ちゃんいこうね"って、だからっ…っ…」
小さい手が、俺の服をギュッと握りしめている。
ただただ俺は背中をさすって、窓の外で降り頻る雨に早く止めよ、と悪態をついておいた。
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しばらくわんわんと泣きじゃくったAちゃんは、疲れたのかそのまま寝息を立て始めた。
起こさないように後ろに倒れ、ソファに半分寝転がる形になってみる。
現状、俺の左脇で胸の上に頭を乗せてAちゃんが眠っている。
泣き腫らした目はまだまつ毛が濡れていて、目の端にも流れなかった涙が溜まっている。
それを指で拭うと、「ごめんね」という寝言が聞こえた。
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (
レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます（ ; ; ）更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです！ (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります！ (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Yajirushi. | 作成日時：2024年3月3日 0時
