過去 ページ27
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コーヒーの入ったマグカップをAちゃんに一つ渡し、俺ももう一つのマグカップを持って隣に座った。
「ありがとう」と小さくお辞儀をして受け取ったAちゃんは、コーヒーを一口飲んだあと、ポツリポツリと話し始めた。
「季節外れの長い雨が続くと、思い出すの」
「何を？」
「昔のこと」
両手で大事そうにマグカップを抱える彼女。
ふわふわの髪は、今日はそのまま下ろされていて。
いつも可愛らしいピアスが付いている耳も、今日はピアスホールが寂しそうにしているだけだった。
「前に、なんで1人で旅行に来たか聞きましたよね」
「うん。…誰かと、約束してたんでしょ？」
「そう」
その誰か、がずっと気になってたんだ。
「…誰と約束してたの？」
「妹です」
穏やかに笑ったAちゃんはそれから、昔の話を始めた。
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「妹は3つ歳下で、一緒に出かけたり、喧嘩したり、普通の姉妹でした。
でも、昔から体が弱くて病気がちで。
小さい頃から何度も入院したり、よく熱を出したりする子でした。
私は反対に健康優良児！って感じで……両親が妹につきっきりで看病してるの見て、嫉妬しちゃったりとか。
私のピアノの発表会に妹が熱を出して両親が来れなくて、大泣きしちゃったり」
「…」
「私が中学1年生で、妹が小学4年生だった時、妹が熱を出して。
それがあまりにも長引くから、容体が悪化したらすぐ病院に行けるよう、両親がずっと交代で看病してました。
けど、土曜日になって、両親がどうしても家を空けなきゃいけないことになって。私がずっと家にいたんです。
そしたらたまたま、その時好きだった男の子に誘われて。
一緒に課題に関係する本を図書館で探そうって言われただけなんですけど。嬉しくて。
でも妹と一緒にいなきゃいけないから、悩んでて。
そしたら妹が、"ねえちゃん、大丈夫だよ。今日はすごく楽だから"って。
バカですよね、その日妹はいつもより熱があったのに。
何かあったらすぐ連絡してと母に言われていたのに。
すぐ戻るから、って私は家を出ました。いってらっしゃい、っていう声が今もずっと耳に残ってる」
「帰ってきたら……」と抱えた膝に涙の跡をいくつもつけながら話すAちゃんを見ていられなくて、思わず背中をさすった。
もういいよ、と俺の気持ちが伝わったのか、必死に呼吸を整えようとしている。
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (
レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます（ ; ; ）更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです！ (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります！ (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Yajirushi. | 作成日時：2024年3月3日 0時
