花言葉 ページ19
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「いらっしゃいませ」
ドアからひょっこりと顔を出したAちゃん。
大きめのニットにレギンス、頭はゆるくお団子に結ばれている。
「入らないんですか」
「あ、えと、お邪魔します」
行き場の失った俺の右手には、早く居場所をくれと言わんばかりの花束。
そんな俺の気持ちも知らず、この能天気なお姉さんは靴箱の中を漁っている。
「石川さん足おっきそうだからな〜私のスリッパ入るかな〜」
そう言いながら差し出されたのは、ホワイトのスリッパ。
試しに履いて！と急かすから、ちょっとだけ履いてみる。
「ほら、足出るよ。かかと冷たいって」
「ほんとだ、足おっき〜」
お腹を抱えてケラケラ笑う様子に、なんかちょっとムッとして。
そのゆるい髪の毛とか、今にも肩が出そうなニットとか、
柔軟剤のふわっと香る部屋の匂いとか、
靴箱の上に置かれた花瓶とか、
もう全部全部にいちいち目を奪われてる俺が、なんかダサくて。
気にしてるのは俺だけだと思うと、ちょっとムカついて。
右手の花束を、Aちゃんの目の前に差し出した。
「あげる」
両手で大事そうに受け取った彼女は、花を覗き込み、パァッと効果音が出そうなくらい目を輝かせる。
「チューリップ！すごい、素敵」
その様子を見ていると、さっきまでのムッとした気持ちはあっけなく消えていった。
「選んでくれたんですか？」
「買い物行ってて、見つけて」
「お花とか買うの？」
「いや、全然」
「このお花、なんて名前か知ってた？」
「知ってるよそれくらい」
幼稚園の時植えた、と付け加える。
俺をリビングのソファへと誘導したAちゃんは、花束と俺を交互に見つめ、くすくすと笑った。
「店員さんに何か聞かれた？」
「ん？んー、『誰に贈るの』って」
「なんて答えたの」
「女性に、って」
「それで」
店員の女性は『素敵ね』と笑い、メッセージカードは付けるかと聞いてきた。
いらないと答えると、『こういうのは気持ちが大事なのよ』とかなんとか言ってたかな。
そっくりそのまま伝えると、彼女は眉を曲げて困ったように笑った。
「きっと、すごくロマンチストだと思われてますね」
「ロマンチスト？なんで？」
「石川さん、花言葉って知ってます？」
知ってるよ、それくらい。薔薇何輪でなんとか、的な。
「赤いチューリップの花言葉はね
愛の告白」
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (
レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます（ ; ; ）更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです！ (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります！ (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Yajirushi. | 作成日時：2024年3月3日 0時
