柄にもなく ページ17
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それからも、Aちゃんとの関係性は変わらない。
あのベンチで会って話したり、LINEしてみたり。
あ、ちょっと変わったのは、夜に電話をすることが増えたくらい?
特に話すことはないけど、他愛もない話を数十分話して、おやすみと電話を切ることが増えた。
あとは、チームメイトにいじられることも、増えた。
『ユウキ、良いことでもあったのか?』
『なんで』
『顔がほら、常に緩んだ感じだ』
『別に普通だし』
『やめてやれよ、ユウキはどうせバレーにしか興味ないんだ』
『そんなことないぜ、ちょっと前までいたろ、ガールフレンド』
ロッカールームでガタイのいい男たちが恋バナしてる様子は滑稽。
時々『キャー』なんて乙女な声を出すおじさんもいる。
『ユウキ、女の話だろ?』
『まあね』
『あのケツのでかい、背の高い女か?ブロンドの!』
『ちがう。内緒』
お先、とバッグを手にロッカールームを後にする。
日本人はシャイだな、なんてヤジが聞こえるけど無視だ無視。
俺が女性の話をしようもんなら、1週間はその話題で持ちきりになるんだから、懲り懲り。
挙げ句の果てには『バレーと付き合うなんて、プレイヤーの鑑だ』とかなんとか言い始めるんだから、絶対あいつらには喋ってやんない。
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洗剤を切らしていたことを思い出して、帰り際買い物に出かけた。
スーパーに寄り、ついでにコーヒーも買っておく。
最近、マグカップを使うことが楽しくて、コーヒーの消費量増えちゃってる気がする。
いつもなら馴染みのメーカーのやつにするんだけど。こだわり無いし。
今日はなんとなく、いつもよりちょっと高いやつにしてみた。
あのマグカップに入れるなら、こういうやつの方がいい。
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会計を済ませ、車まで戻る間にふと花屋が目に入った。
店頭に溢れんばかりの花が並んでいて、一際存在感がある。
目に留まったのは、かわいらしく色付いた花。
多分コレは、チューリップってやつ。知ってるよ、幼稚園の時球根から植えたから。
ふと、Aちゃんが花束を手にしている様子を思い出した。
この花も、きっと彼女によく似合うと思う。
思い立った頃にはもう店内にいて、店員のお姉さんに『店の前にある花をください』と伝えていた。
受け取った花束が、俺には超不釣り合いな気がして、なんか恥ずかしい。
足早にあのベンチを目指した。
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時