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お礼の、お礼 ページ16

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食事をして、ショッピングをして、コーヒーを買ってドライブをした。


話が尽きなくて、でも沈黙も心地よくて。





人見知りだと自負している自分がこんなに早く打ち解けるなんて、不思議な気持ち。




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夕日が沈みそうになった頃、アパートの駐車場に着いた。




「ありがとうございました、楽しかった」


「よかった。お礼になった?」


「なったなった。本当に楽しかったです。こんなに楽しいお礼が待ってるなら、もっと風邪引いて良いですよ」


「ひどっ」





車から降り、アパートへ向かう。




あー、終わってしまった。


もっと遠回りすればよかったかな、とか考えてしまう自分が気持ち悪い。



いくつだよ。





名残惜しさ全開で、じゃあと手を挙げると、目の前に小ぶりな紙袋が差し出される。




「え、なに?コレ」



「お礼の、お礼?」


「俺に?」


「そう」


「まじか、いつ買った?」


「さっき、雑貨屋さんで」




ランチの後に訪れたおしゃれな雑貨屋。


"生活用品が足りないから"となにやら買っていたけど、あれは俺の為だったのか………






差し出された紙袋を受け取ると、重さが手に伝わってくる。





「開けて良い?」


「どうぞ」


「……お、マグカップ」





可愛らしい包装紙から出てきたのは、マグカップだった。


くすんだ淡いブルーで、若干丸みを帯びたフォルム。



取手の部分にゆとりがあり、大きめの俺の手にフィットしてる。





無言でカップを見つめていたからなのか、不安そうな顔をしているAちゃん。




「ありがと。使わせていただきます」


「よかった」




今の声、ぶっきらぼうに聞こえてしまっただろうか。



本当はすごく嬉しくて、もっと喜びを表現したいけど。




それ以外の感情も溢れ出てしまいそうで、必死に心の中にしまった。







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家の中に入っても、彼女の笑顔が浮かんでくる。




貰ったばかりのカップをシンクに置くと、ふと視線の先に、無惨に割れた黒いマグカップが映った。



元カノと喧嘩して、割られてしまったマグカップ。






_______「見た瞬間、石川さんにピッタリの色だと思って」




元カノが選んだカップは、黒。




でもAちゃんの選んでくれた色が、本当にしっくりきて。





あー、会いたい。さっき会ったばっかなのに。





どんだけ好きになってんの、俺。





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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時

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