大丈夫? ページ12
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おでこがひんやりとして、思わずそれを払い除けようとしたら。
どうやらそれは、小さい手だった。
「ごめんなさい、起こした?」と柔らかい声が聞こえて、そのまま目を閉じていたいような気分になる。
「夏目さんだ」
目を閉じたまま、そう呟くと、「はい、どうも」と声がした。
「トレーナーさんでも風邪ひくんですね」
「…人間だし」
ゆっくりと目を開けると、俺の部屋のソファで。
床に膝をついた夏目さんが、心配そうに笑っている。
さっきの香水の匂いはもうしなくて、換気してくれたんだなとか呑気に考えた。
「びっくりしましたよ。たすけて、とだけLINE送られて来て、来てみたら座り込んでるし。気持ち悪いとか寒いとかしか言わないんだもん」
こんなでっかい人間運んだの生まれて初めて、明日筋肉痛です、とかなんとか言って口を尖らせてるお姉さん。
「マジで助かった。久しぶりに熱出た…死ぬかと思った」
「おおげさ。薬飲みました?」
「まだ、てか、あんま薬は飲めない」
バレー選手だからね、なんて言えないけど。
ふーん?と適当に返事をした彼女は、キッチンを見てしばらく考え込んでいて。
「ちょっと待ってて」と言い残して、玄関を出ていった。
まじで〜?ここで1人にする?
結構心細くなってるんだけど今〜。
風邪引いてるし、なんかいろいろあったし。
どこ行っちゃうんだよ〜〜「ハイになってる?」
普段そこまで喋らない俺がうだうだ言ってるのが珍しいのか、再び現れた夏目さんは小さい鍋を片手に俺を覗き込んでいる。
「なにその鍋」
「ご飯食べてないですよね?おかゆくらいならあったから」
そんな都合よくおかゆある?と思ってたら、「イタリア料理食べ過ぎてお腹壊した」と。
「食べ過ぎでしょ、そろそろこの街の食材無くなっちゃうって」
「あ〜〜〜!もういい、しらない、そのまま枯れてください」
「うそうそごめんごめん食べたいです」
わざとフンフンと怒ったふりをする夏目さんが、キッチン借ります〜とコンロで鍋を温めている。
「ちなみに和食テイスト?」
「そうですけど、今からケチャップ突っ込もうかなって」
「ほんとにごめんって」
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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時