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救世主 ページ2

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「本当にありがとうございました」



深々と頭を下げた女性。


袋に入った野菜たちが、居心地悪そうに右手へ体重をかける。




どうやらこの女性、街で携帯電話をすられたらしい。

どうすればいいかわからず、日本人を探していたと。



「旅行ですか」

「はい、まあそんなところで」

「まさか1人?」

「もちろん1人です」

「…気をつけたほうがいいです。日本ほど治安良くないんで」



ですよね、と気まずそうに笑う女性は、俺のことを知らないらしい。



ネットに書かれるとかなんとか考えていた自分が心底恥ずかしくなる。




顔から火が出そうで、慌てて話題を変えようと早口でまくし立てる。



「滞在先とか、わかりますか?そこまで行けます?スマホないですけど。イタリア語は話せます?」


「あー…わかりません。イタリア語も全く喋れません」



あはは、と照れたように笑う女性は、「なんとかします」と意気込んだ。



「なんとかって?」


「ほら、あの、ノリで」


「ノリ」



ノリか。この人はそんな感じで言語の違う土地に来れてしまうような人なのか。

いや、ノリとかそういう思い切りこそ必要なことなのか?


とか、自分にはないアクティブな発想を持つ女性のことを不思議に思う。


確かにこの人、スマホ無くした割にはさっきから街並みを楽しそうに眺めているし、向かいにあるジェラート屋さんをジッと見つめたりしている。



「あそこのジェラート、高いですよ。観光地価格です」


「へ?」



思考を読まれたことが恥ずかしかったのか、キョロキョロと目を動かす女性。


表情が豊かな人だな。




「ホテル、名前とか住所とかメモしてないですか?」


「えっと、確か」



小さなカバンから小さな手帳が出てくる。

中には綺麗な字が並んでいて、1箇所だけ、拙いイタリア語のメモが残されていた。



「メモはしたんですけど、そもそも私この文字読めない事に今気づきました」

「まじすか」



なんなんだこの人。本当にノリでイタリアに来たのか。

本人ケラケラ笑ってるよ。




「だいたいわかったんで、送りますよ」

「え、いや、悪いです」


大丈夫です、と首をふる女性に「通り道に安くておすすめのジェラート屋さん、あります」と声をかける。


するとパッと花が咲いたように笑い、その後考え込むように眉をひそめ、申し訳なさそうな顔をした後に。


「よろしくお願いします」


と、威勢のいい声が聞こえた。



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〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時

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