出会い ページ1
.
なんでもない昼下がり。
スーパーで食材を調達する。
異国の地だと思っていた場所は、毎日住む場所に変わり、早数年が経った。
知らない味はまだたくさんあるが、スーパーに並んでいる物はだいたい見慣れた。
最近はなんとなく調子が悪い気がして、"筋肉を作る"だとか、"疲労回復"だとかに効果があるとされる食材を手に取った。
食べる物で、身体はできているとは、まさにこのことだと思う。
.
一通り商品を見終わり、バスケットの中も充実した。
会計をしようかとレジを見渡した時、「sorry」と声がした。
まずい、とかやばい、とかそんな言葉が咄嗟に頭をよぎる。
英語はできないわけじゃないけど、得意でもない。
できるだけ関わりたくないことに変わりはないので、自分がアジア人だとわかれば難を逃れられるんじゃないか、なんて淡い期待を抱きながら恐る恐る振り返った。
「…もしかして、日本人ですか」
「っ、あ、そうですケド」
突然の母国語に、腰が抜けそうになった。
普段このスーパーで、日本人を見たことがない。
声の主は俺よりも遥かに身長が低い、いくつか歳下に見える女性だった。
小さいショルダーバッグの肩紐をギュッと両手で握り締め、眉を歪ませている。
バレた、と思った。
これまでファンの人と街中で出くわしたことは何度かある。
けれどスーパーで出会ってしまうとは。
ネットに書かれて、カゴの中身はなんだった、とかなんとかかんとか書かれてしまう。
いや、別に書かれてまずい物は入ってないけど。けど。
何を言おうかとあれこれ言葉を探しているうちに、女性が「あの」と口を開いた。
「携帯、貸してもらえませんか」
「は?」
.
141人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
〇〇(プロフ) - いつもお話読ませて頂いてありがとうございます。ドキドキハラハラしますね。楽しみです。 (4月23日 11時) (レス) @page41 id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
Yajirushi.(プロフ) - 〇〇さん» 読んでいただきありがとうございます( ; ; )更新速度が遅く、申し訳ありません。楽しんでいただけますと幸いです! (4月6日 23時) (レス) @page33 id: 475853de31 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (4月5日 20時) (レス) id: 17708f6b5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Yajirushi. | 作成日時:2024年3月3日 0時