99錠 ページ10
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自室の机は いやに冷たい
開いた薬学書を端に寄せて、居眠りするように顔を伏せた時 そう感じた
父親にあんなに強くものを言われるなんて、いつぶりだろう
私の個性が発現した時？
…いいや、母親が死んだと言った時以来だろうか
その時も、昨日も、怒鳴りつけたりはしない
ただ、強い芯を秘めた口調が珍しく現れるだけ
私のお父さんはいつだって温厚で
時折 お母さんにそっくりな私を見て、少し悲しげな表情を見せる
だからこそこんなに大切に、一人で育ててくれたんだと思う
( だからこそ、私はこんなにも迷っているんだと思う )
自分と父親を天秤にかけるなんて 嫌だった
｢…諦めるしか、ないのかなぁ｣
消えて なくなるくらい、小さい声が零れた
それを追うように、コンコンとノックの音が聞こえて 顔を上げる
聞こえてはいなかったと思うけれど
独り言に対しての恥ずかしさから やけに慌ててしまった
｢A｣
扉の向こうから お父さんの声
いつの間に帰ってきていたんだ、と驚きを覚えながら ひとつ返事をする
なあに、と同い年くらいの女の子らしく返事ができない自分が ちょっと嫌いだった
…どうして扉を開けないのか
歩み寄って ドアノブに手をかけようとしたが、お父さんの言葉に 私は動けなくなった
｢ 僕は勘違いしてたみたいだ｣
スタンドライトの明かりだけがぼんやりと背後に佇むこの部屋
扉を開けても 彼の顔は逆光で見えないだろう
それでと、なんとなく、開けてはいけない気がした
｢…勘違い？｣
手を体の横に力なく落として、木の板1枚を隔てた向こう側へ 言葉を返す
こんなにも近くにいるのに 変に遠く感じた
｢ 君が、恵まれない子だって ｣
｢……何を｣
言っているの？と言葉にしかけたが
こみ上げる、名前のつけようのない感情に、それを邪魔された
実の親に 恵まれない子、と言われる未来なんて
幸せな私は 妄想ですら描いたことがなかった
心臓を貫かれたみたいに、息ができない
｢…そんなこと、思ってたんですか ｣
どうして？
母親が眠り続けていること？
そんなもの、私にはもう当たり前になっているというのに ？
震えた声は 歳相応だったと、自分でも思った
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しおり(プロフ) - 凄く面白かったです！ (2020年5月9日 10時) (
レス) id: 88ef928d1d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢(プロフ) - 爆豪勝己の方のパスワードおしえてください！！！(☆´_ _)ﾍﾟｺﾘ (2019年5月16日 21時) (レス) id: 28399f0f04 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続き楽しみです！ (2018年1月20日 19時) (レス) id: ea150721a5 (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - あやりずさん» ありがとうございます…！！(；；)亀更新ではありますが、完結まで楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 98425ad901 (このIDを非表示/違反報告)
あやりず(プロフ) - 面白いです！！轟くん大好きなので…wこれからも更新頑張ってください〜！ (2017年12月28日 22時) (レス) id: 701a0aacb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しの | 作成日時：2017年10月13日 20時
