94錠 ページ5
side:轟焦凍
｢本当に、申し訳ないです｣
落ち着いたのだろうか、薬師神は2度目の謝罪を零す
暗くてよく分からないが なんとなく瞳がいつもよりも濡れている気がした
｢大丈夫か｣
｢はい、大丈夫です｣
彼女の力無い笑みが、通りがかった車のライトで一瞬はっきりと見えた
大丈夫という言葉にはどうも不釣り合いだ
｢…薬師神、最近おかしいぞ｣
初めて 彼女にそんなことを言った
体育祭の時といい、今この瞬間といい、何かを抱え込んでいるようだったから 気になっていたことだ
作っていた笑顔が崩れて、瞳が揺れる
さっきの言葉は嘘だったのだろう
目線を落とす彼女が ずっと小さく見えた
｢ヒーロー科編入のことを伝えたら、父に止められてしまって｣
その顔は 不思議と、あまり悲しみに歪んでいない
合わない目線がどうにももどかしくて、気づけば俺は 口を開いていた
｢なんでか、聞いてもいいか｣
迷うように、視線が泳いだ
彼女の目つきからしか何も読み取ることは出来ないから、ずっとそれを頼りにした
どうしてこんなに首を突っ込んでいるのか
自分にだって分かりはしないことだった
ゆるりと首を横に振りかけたが、数秒停止した口は 恐る恐る開かれた
｢私のお母さん、昔に死んでしまったんです｣
ぽつりと降り始めた雨のような呟きだった
唐突な身の上話は思っていたより軽々しいものなんかじゃなくて、少しばかり動揺した
そんな俺の様子も俯いた彼女には見えないから幸いだったが
｢私が3歳の時…だったと思います｣
あまり覚えてないんですけどね、と また力無く微笑みを見せた
どうして笑っているのか
わけがわからず、少し首を傾げたが 彼女は諦めたように話をつらりと流し始める
｢目的は知りませんが、仕事場に敵が襲ってきて そこにいた私を庇ってくれたのをうっすら覚えています｣
来た道をぼうっと眺めて淡々と話すのを、俺はただ黙って聞いていた
と言うより、言葉が見つからなかった
落ち着いた声がやけに心地いいから 奇妙だった
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しおり(プロフ) - 凄く面白かったです！ (2020年5月9日 10時) (
レス) id: 88ef928d1d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢(プロフ) - 爆豪勝己の方のパスワードおしえてください！！！(☆´_ _)ﾍﾟｺﾘ (2019年5月16日 21時) (レス) id: 28399f0f04 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続き楽しみです！ (2018年1月20日 19時) (レス) id: ea150721a5 (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - あやりずさん» ありがとうございます…！！(；；)亀更新ではありますが、完結まで楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 98425ad901 (このIDを非表示/違反報告)
あやりず(プロフ) - 面白いです！！轟くん大好きなので…wこれからも更新頑張ってください〜！ (2017年12月28日 22時) (レス) id: 701a0aacb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しの | 作成日時：2017年10月13日 20時
