美しい人。【ホークス】 (ページ2)

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第一話ページ2

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玄関にあった明らかに男が履くようなものじゃないヒール。扉越しからは女の甘ったるい声と彼氏の荒い呼吸。

床に散りばめられた下着やズボン。言い逃れなんて出来ない状況に侵入してやろうかと悩み、やめた。そっと家から出て彼の連絡先に別れの言葉を送ってブロックした。この作業には慣れている。

『…急に来るんじゃなかったな』

今まで付き合った人も、同じような別れ方をしている。

最初は順調だった。月に何回かデートをして、連絡も暇があったら取り合って、大好きと言われていた。

だがそれはあくまで最初だけ。付き合って少し経つと、他の人とは圧倒的に会える時間が少ない現実を目の当たりにして、寂しさを理由に他の人のところへ行く。

_____Aはさ、本当に俺のことが好きなの？

歴代の恋人ほぼ全員に言われた言葉。好きじゃなかったら付き合ってない。浮気しないって言ってたくせに、バーカ。

『…男運無さすぎ』

スマホがポケットの中で振動した。まさかと思ってみたが、予想していた人物とは違って思わず応答ボタンを押した。

もしもーし、とご機嫌な声が聞こえる。まだ事務所にいるのか賑やかだ。

「過去１早い応答でしたね、かけておいて何ですけどびっくりしました」

『仕事がなかったからね。ホークス、このあと空いてる？飲みに行きたい』

「珍しいですねホント。空いてますよ、いつもの店でいいですか？」

後ろからデート？というはぐらかす声が聞こえた。名前も碌に知らないけど、今だけはサイドキックを少し恨んだ。