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沈む ページ39

いつだったか、Aが地味だと言ったベッドの上。

髪が無造作に広がり、
いっぱいに見開かれた目が俺を捉える。

瞳は、恐怖で揺れている。

そんなことには気づかないふりをして、喉元に口付けを落とす。


「んぅ…」

苦しそうな声が漏れ出ている。

人差し指で手のひらを撫でてやりながら、
首をしつこく食む。

「っ、宇髄、くん…」

『嫌だったら言ってな』


初めのうちは、優しく。
大丈夫だ。Aはそう簡単に離れていかない。

自分で頷いてしまったからだ。

責任感の強い彼女が、また逃げ出すなんて考えにくい。


心の中では分かっていても、不安にはなるものだ。


「うん、大丈夫…」

強がっている。

『ありがとな、愛してる』

きっと怖いのは初めだけだ。
じきに俺が欲しくなる。

いや、もう欲しいだろ?


体を持ち上げ、瞳を覗き込む。
恐怖の色は薄れている。

「…私も、愛してる」

『…』

やっぱり、堪らない。

無防備な唇を奪う。
驚いたのか、手をきゅっと掴まれる。

顔を離すと、Aは誘うような視線を寄越す。


目は口ほどに物を言う、という訳か。


『本当に可愛いな、Aは』

形容しがたい満足感に、胸が打ち震える。

「宇髄くん」

『うん?』

「…私、帰れる?」

『もちろん』

今日とは、言っていないが。

「あ、いや、今日ね。今日帰れる?」

『…好きにしろよ』

声のトーンを低くするだけで、Aは少し怯えたようだった。
痛みも与えていないのに、何故だろうか。

…まぁ、可愛いからいいか。

『帰りたいわけ?』

「うん…」

『ふーん、今すぐ?』

「それは…」

組み敷いた状態では話しづらいだろう。
体を起こしてAを自由にする。

「宇髄くんは?」

『俺?俺は…どっちでもいいけど。
Aが帰りたいなら帰れよ』

「じゃあ、明日仕事だし帰ろうかな…」

警戒心は大分薄れているようだった。

今はこれで良い。


『ん、おやすみ。また明日な』

別れ際に、頭を掻き撫でて額にキスをする。

惚けた顔のAを見送ったところで、我に帰った。


『…そういや、仕事って』


結局なんの連絡も寄越さずに学校を後にしてしまった。

絶対派手に怒られるじゃねぇか…

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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