歪め。【宇髄天元】

いじめる ページ13

『砂川ちゃーん、出ておいで』

「嫌です！お断りします！」

叫ぶAの前には、大きな体が立ちはだかっている。

『悲鳴嶼さん、別に変なことしねぇから退いてくんねえかな』

「宇髄、それは承諾しかねる」

あぁもう、みんなAに甘すぎ！
新入りの女子だからか知らねぇけど、俺が悪いことしてるみたいじゃねえか。

あいつも人に頼ることを覚え出して、第三者を介入させてくる。


『今回は違えから、ちゃんとした用があんだよ』

「そうなん…ですか？」

やっと悲鳴嶼さんの背中から顔を出した。

「あの…」

「嘘ではないだろう。行ってやりなさい」

「はい…ご迷惑をおかけしました」

なんでそっちに確認取るんだよ！と言いそうになるのを堪える。


『さっさと行くぞ』

なんだか腹が立って、強引に彼女の手首を引く。

「わ、」

大股で歩く俺に、小走りで一生懸命についてくる。
なんつーか、いじめたくなるっつーか…

「ちょっと、もう少しゆっくり」

『お前がゴネたから急いでんだよ』

実を言うと急ぎの用などはないのだが。
と、こんなことを言った暁にはAはどれほど怒るか分からない。

もう息を切らしかかっている。体力ねぇのかよ、可愛い。

「…ところで、仕事って？」

声が先ほどよりも刺々しくて、思考が読まれたのかと思ってしまう。

『あれだよ、クラスのことで相談があって』

「あぁ、なるほど」

学級のことで担任と副担任が話すのは全くもって珍しいことではない。


「…それ、職員室じゃ駄目だったんですか」


鋭いな。

『大事な話なんだよ』


疑いは拭いきれないようだが、ここまで来てしまったものは仕方ないとついてくる。
なんやかんやで、Aは甘い。

どこまで俺に心を許しているかは知らないが、そんなに悪い奴ではないと思っていることだろう。

『っつーことで、教室行くぜ』


そんなんだから俺みてえなのにつけ込まれんだよ。


あどけなさの残る顔を横目に盗み見て、
再び彼女の手を取った。

「…」

Aは離してほしそうに腕を揺する。

…小っせえ手だな。指も簡単に折れそうだ。

『そうカタくなんなって。緊張してんの？』

「してません」

Aがどんなに頑張って怖い顔をしようと迫力はない。

する、と指を絡めてみれば目をいっぱいに見開いて、頬を紅潮させる。
手を離してやると寂しそうにするので笑いを堪える。

なんだこいつ、可愛い。

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