歪め。【宇髄天元】

出会う ページ2

『遅刻遅刻！』

自転車で爆走。
トーストはくわえていない。

サラリーマンのおじさんにぶつかりかけて平謝りしたが
イケメンにはぶつかっていない。

もちろんそんな期待はしていない、純粋な遅刻なので。

とにかく間に合えとペダルを強く踏む。



その時の私は、あんな出会いをしてしまうなんて知らない。



『おはようございまーす！』

「お、やっと来た」

「ギリギリだな！」

「…本当に大丈夫か」

大丈夫です、だって間に合ったもんね！ギリギリセーフ！

『おはようございます！今日からこちらでお世話になります、
砂川Aと申します！よろしくお願いします！』

そう、今日は初出勤。

ちなみに職業は教師。4年目。
中高一貫校のキメツ学園に異動してきた。

この辺りは昔住んでいたので懐かしい。

…そんなことはどうでも良くて。

「まぁ、息切らしちゃって」

「もっと自覚持てよォ…ま、あいつよりマシか」

あいつ？

「そうだな！まぁ日常茶飯事だが」

「しかも悪びれないからな。悪質だ」

なるほど、私よりやばい遅刻常習犯がいるらしい。
すると、私のすぐ横のドアが勢いよく開いた。

『うわ』

「あ、来た」

「おはざーっす」

でっかい先生だった。
ラフな格好に、謎の頭飾りと化粧。

職員室の中でも、色々浮いてる。

「宇髄、何か言うことはないのか」

「なんだよ揃って怖え顔して、今回は間に合ってるだろ」

「間に合っていない。時間から教え直さないといけないのか？」

口々に説教をする先生方。
私は完全に蚊帳の外という感じで…呆然と、立ち尽くしていた。


悪びれることなく遅れてやってきては我が物顔をする。

昔からそんな人だった。

「宇髄先生、新しい子もいるんだから振る舞いには気をつけてね」

「新しい子？…あ」

目が合った。

『…はじめまして』

「…ども」


砂川A、26歳。

私の人生は再び狂い出そうとしていた。

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