歪め。【宇髄天元】

困る ページ10

「それにしても、清々しいくらい信用ねぇな」

『当たり前でしょ。
聞いてくださいよ煉獄先生、この人ときたら…』


私は宇髄くんと二人になるのがとにかく嫌だったので
帰りも煉獄先生に同行してもらうことにした。

宇髄くんは不服そうに口を尖らせている。

「はは、仲が良かったんだな」

『そういうんじゃなくて…』

煉獄先生にまで誤解されてはたまらない。

「宇髄は馴れ馴れしいところもあるが、決して悪い男ではないと俺は思っている」

「さすが煉獄。派手なだけあるぜ」

悪い人じゃないのかもしれないけど
悪い男ではあると思う。

「だが宇髄も、距離感を間違えるな。
もっと社会人という自覚を持った方がいい」

『そうそう。さすが煉獄先生』

的を得たことを仰る。
もっと言ってほしいくらいだ。

「砂川、煉獄に懐きすぎじゃねぇの」

『そう？煉獄先生は誠実そうですし。宇髄先生と違って』

むっとする宇髄くん。
珍しくすぐに言い返してこない。

「俺は、別に…」

『何？』

「なんでもねぇ。っつうか、俺は誠実だぜ」

宇髄くんが誠実？無い無い。

「宇髄は女性を泣かさないしな」

『え？』

「割とそういう部分はしっかりしているんだ。意外だろう？」

意外も何も、煉獄先生それは勘違いですよ。
何人女を泣かせたと思っているんですか。

私だってちゃんと知ってるわけじゃないけど

煉獄先生よりは知ってるつもりだ。



『この辺で大丈夫です。
送ってもらってありがとうございます』

「そうか。じゃあ、気をつけてくれ！」

「また明日なー」

ぺこりと頭を下げるとぶんぶん手を振ってくれる二人。
少しだけ手を上げて、踵を返した。

ちょっと行ったところで振り返ると、

宇髄くんと煉獄先生が並んで歩いているのが小さく見えた。


二人は仲が良さそうだ。







ーーーーー

「…煉獄、どうよ」

『うん？』

「砂川が俺のことどう思ってんのか分からねぇ」

吹き出しそうになるのを堪える。

宇髄がそんな悩みを持ちかけてくるなんて。

『間違いなく警戒はされているようだが』

「デスヨネー」

うろたえる迷子のようで新鮮だ。

「俺も悪いのは知ってるけど…」

見ている限りでは120％宇髄が悪いが
きっと原因は俺の知り得ないところにあるのだろう。

それくらいは分かる。

『まぁ、ゆっくり育てていこう』

「何を」

俺は笑ってはぐらかすだけだった。

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