歪め。【宇髄天元】

誤魔化す ページ8

「『おはようございまーす』」

同時に職員室のドアを開け、同時に声を発した私たちに視線が刺さる。

酔い潰れて持ち帰られた上、朝一緒にやってくるなんて怪しいに違いない。分かりますとも。

「お前ら…」

『いや〜今日はいい天気ですね！』

「派手に快晴だよな〜雲ひとつなくね？あ、あったわ！」

「…」

ごまかし方下手か！みたいな顔で見られる。
しかし茶番劇を繰り広げる私たちを問い詰める気は起きなかったようだ。


それにしても頭が痛い…

「砂川」

『はい？』

目つきの悪い不死川先生。
こ、怖い。シメられるのかな。

「二日酔いには気ィつけろよ」

そう言って差し出したのは…野菜ジュース。

『あ、ありがとうございます』

優しい…

「人って見かけに寄らないわよね」

『胡蝶先生。そうですよねぇ』

おしとやかに笑う胡蝶先生。いい匂いがする…

「宇髄先生は印象通りって感じだけど」

なんで宇髄くんが出てくるんだ。

『あはは、そうですよねぇ…』

「でもねぇ、いかにも遊んでそうな見た目してるじゃない？
なのにあの人の浮いた話、意外と聞かないの」

『えぇ』

いやいやそんなわけないでしょう、
宇髄くんが遊んでなきゃ誰が遊んでるんだ。

「女たらしって言うよりね、ただモテるだけよ」

『モテるでしょうね』

「…だから、こういうことは初めてかもしれないの」

『こういうことって？』

聞いても胡蝶先生は楽しそうに笑ってはぐらかすだけだった。



「砂川、どこ行くの」

『コンビニです』

「弁当かよ」

そうだよ。
あんたの家に軟禁されたせいで用意できなかったんだよ。

「じゃあ俺も行こ〜」

見てください、胡蝶先生。
こんなに女性に付き纏う男のどこが遊んでいないんですか？

「ほんとにいい天気だよな。暖かくなってきたし」

『すっかり春ですよねえ』

宇髄くんは常にさりげなく車道側を歩いている。

学生時代もそうだった。

『宇髄先生ってモテますよね』

「そりゃド派手に」

『ですよねー。彼女さんとか数えきれないくらいいたんだろうな』

彼の中で、私がそれに入っているかは分からない。
私の中では入ってない。てか入りたくない。

「どうだろうなー」

あまりにもふわふわした返事だ。

中身のないような、適当な相槌みたいな。

彼には昔から適当な返事でごまかす癖があったと思い出す。
案外よく覚えてる。


結局のところ何人落としたんだろう。

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