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擦れる ページ41

『…帰らない気?』

「Aから聞いてくるとか、地味に珍しいな」

突然泊まる、なんて言われて困らされるのは散々だから。

「そうだな…Aがよかったら」

私がよかったら、ね。


宇髄くんの表情を窺おうとしてやめた。
窺うも何も、あちらはずっと私のことを見ているし。

『…今日は急だから駄目』

「だよな」

『その、次来たときは…いいけど』

そう言って目を合わせると、宇髄くんは少し驚いたようで
けど、にっこりと笑った。

「ありがとな…Aは優しいな」

『何それ』

なんだか調子が狂う。

ずるい、そんなふうに笑って。


「あーあ、帰りたくねえなー」

大袈裟に嘆く宇髄くん。

聞こえよがしに言ってもだめですよーって笑うと
こちらを振り向いた。

「あのさ、提案なんだけど…一緒に住まねぇ?」

『うん?』

あんまり考えなかった。

けど、どうなんだろうなぁ。だめな理由はないけど。

『…ちょっと早いんじゃない?』

「早いか?」

『お互い会おうと思えば苦労しないわけだしさ、
そんなに焦らなくてもいいと思うけど』

宇髄くんがむっとしているように見えて少し早口で話す。


「…まぁ、そうだよな!」

にぱっと笑う宇髄くん。
感情が読めない。

『なんか、ごめんね』

「謝んなよ」

『ごめん…あ』

困った顔をさせてしまった。

なんだろう、上手くいかない。


「…疲れてんじゃね?」

『そうかな』

「Aは自分が頑張ってる自覚ねぇんだろうな。
ちゃんと休んでくれよ、心配するから」

宇髄くんは優しいなぁ。

『ありがとう、そうするね』


どこか軽やかに、宇髄くんは帰って行った。

私はようやく息を吐き出した。


…ようやく?


どうやら私は、緊張していたらしい。
宇髄くんは優しくて、いつもの調子で接してくれたはずだ。

それなのに、なんだかおかしい。

『…はぁ』

きっと、相性が悪いんだ。

考え方とか、価値観とか、微妙にずれてて
そのずれがどうしても気になっちゃうのかな。

多分、私だけじゃない。宇髄くんだってそうだ。

だからあの時は、耐えられなくて。


些細な問題と言えばそうだけれど、私たちが根本的に合わないのだとすればかなり大きな問題かもしれない。


今更こんなことに気づくなんて。

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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