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『おはようございます』

「おう、砂川。大丈夫かァ?」

翌朝、不死川先生は私を見るなり声をひそめて尋ねてくる。

『はい。家で一人でいるより働いた方が良いです』

「それもそうかもなァ…まぁ、無理はすんなよ」

『ありがとうございます』

やっぱりショックではあったし怖かったけれど
今はそれほど恐怖心は残っていない。

一応、解決はしたし。





「お疲れ様」

「お疲れ様だ!」

「あぁ、お疲れ」

くっきりとした橙の夕日が窓から射してきたところで、私たちはぱらぱらとかばんを持って立ち上がり始めた。

私も帰ろうかと思ったところで、少し不安になる。

もう心配がないとはいえ、一人で行動するというのはどうも落ち着かないものになりそうだ。

『…ふぅ』


深呼吸をして立ち上がると、

「みんな早いのな、だったら飲み行こうぜ!」

と宇髄くん。

「「「さんせーい!!」」」

とみんな。

私はなぜか強制参加だった。





ーーーーー

『運転手さん、そこ曲がって。こっちの道入って。
あぁ、ここで良いわ。ありがとな』

Aは飲み会でうっかり強めの酒を飲んで眠ってしまった。
今回は俺は何もしていない。これ本当。

お持ち帰りはしない。家に送ってやるだけだ。

眠りこけるAを抱きかかえてタクシーを降りる。


矛盾してるよな。

ここまでやっといて、Aをこれ以上傷付けたくないとか。
自分がAにいくら傷を付けてきたことか。


『…ほら、家着いたぜ。起きろ』

揺するも全くの無反応。これは起きないな。

『…許せよ』

Aの鞄のポケットに手を入れ、鍵を取り出す。


『ごめんな、助けに行けなくて』

口をついて出たのはそんな言葉だった。

俺の助けなんて望んでいないだろうに。

家に入り、ベッドに寝かせ、そのまま立ち去る…はずが。
動けない。


寝かせたはずのAは、首に腕を巻きつけてくる。

『おい、お前』

酔っているのか寝ぼけているのか知らないが、
これは想定外だった。

「…本当だよ」

掠れた声がして、顔を上げてみてぎょっとした。
Aは泣いていた。

「なんで、助けてくれなかったの。
怖かったのに…」

ぼろぼろ涙を零しながら訴えてくる。

恐怖が蘇ってきたのだろうか。

『…』

そっと指で涙を拭うことしかできない。

抱きしめたいけれど、それはできなかった。
本当に壊れてしまいそうだったから。


今のAは、それほど脆いものに見えた。

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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