歪め。【宇髄天元】

導く ページ4

「おい」

『…』

「おーい」

『……』

なんか後ろでおいおい言ってる人がいるけど私にじゃないよね。うん、きっと違う…

「砂川A、無視すんな」

私だった。

『あ、ごめんなさい…ひっ』

勢いよく振り返れば、目と鼻の先に整った顔があってのけぞる。
近いです宇髄先生。

「地味に他人行儀だな、敬語とかいらねぇよ」

『でも』

「同級生だろ。てか、それ以前に俺とお前の仲じゃねえの」

…いや、知りませんが！？

「あら、どういう仲なのかしら」

聞きつけてしまった胡蝶先生がやってきた。
はぁ、めんどくさいことになった。

絶対余計なこと言うなよ、と宇髄先生を睨みつける。

「同じ高校出身なんだよ俺ら。な」

『そうなんです〜偶然ですよね〜』

「あらあらそうだったの。なら安心ね」

全くそんなことはありません。
なんて聖母のような笑みの胡蝶先生に言えるはずもなく

愛想笑いで返すしかない私だった。

「そうだわ。宇髄先生、砂川さんに学園を案内してくれないかしら？」

『え』

「知り合いだったらちょうどいいじゃない」

「派手に任せとけ。行こうぜ」

こ、胡蝶先生ー！笑顔で手を振らないで！



まだ世間は春休み。
なのにこの心苦しさはなんなんだ、おい春休み。

『はぁ…』

「うわっ感じ悪」

『すいません』

愛想笑いもめんどくさくなった。
この人相手に猫かぶっても意味ないし。

「…お前から来てくれるとか予想外だったな」

『そんなつもりなかったんだけどね』

こっちだって宇髄くんがいるとか予想外だった。

教室を適当に教えられ、
部活動中の生徒に挨拶をして、

広ーい校舎をぐるりとまわった。

「お前は高等部だから基本こっち側だけでいいだろ。
分かんねえことありますか」

『ないです』

「おう、何かあったら聞きにこいよ」

笑う宇髄くん。
学生の時も大きかったのに、今はもっと背が高い。

「なんかあるか？A」

『砂川』

「は」

『砂川と呼んでください』

「ちぇ、堅苦しいの」

いや、名前で呼びあう教師なんて見たことないから。

宇髄くん…じゃなくて宇髄先生はむすっとしていたが、
ちょっと悪い笑みを浮かべる。

「二人の時はいいだろ」

腰を折り、私の耳に直接声を流すように、囁く。

『よ、よくない』

つい耳を押さえてしまう。
はぁ、先が思いやられる。

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