真相 ページ32
『大丈夫…?』
「あぁ、心配をかけてすまない」
冨岡さんはベッドに腰掛けて、いつになく深刻な顔をしていた。
「それよりも…思い出した」
心の奥がひやりと冷たくなる。
嫌だ、聞きたくない。
『…何を?』
そう思うのとは裏腹に、問いかけてしまう。
「遠い昔の話だ…大正の。鬼がいた頃の」
『鬼…』
「鬼がいて、人を食っていた。鬼狩りもいて、人を護っていた。
俺はかつて鬼狩りだった」
冨岡さんは大正の人じゃない。
ただ、その鬼狩りの記憶が呼び起こされた。あの刀によって。
「鬼は手強いが俺は生き延びた。そしていつも代わりに誰かが死んだ。
貴方もそのうちの一人だ、柏原さん」
私は…というか、冨岡さんが私だと言う人は
ただ鬼に襲われていたのだと言う。
冨岡さんは私を連れて逃げた。護りながら戦った。
しかし、苦戦を強いられて、命の危機に瀕した。
「死を覚悟した…でも、俺は死ななかった。
力のない貴方が、代わりに斬撃を受けた」
護るべき人を護れなかった。
冨岡さんは以前そう言った。
「初めてではなかったが、そういうことはずっと頭に焼き付いて離れない。自分が死ねばよかったと何度も思った。
…そういうことなんだ、柏原さん」
『…もういいよ、喋らなくて』
たまに耳に入る雨の音が、鼓動を急かした。
「俺が貴方に感じたものは、この体に流れる血の、
かつての鬼狩りの後悔だ」
『もういいよ』
聞きたくなかった。
全部聞いてしまったけれど。
私たちを繋ぎ止めていたのは、結局その程度だった。
『でも、ごめんね冨岡さん。私、全然ピンと来ない』
寂しいよ。
『私には、本当にその人の血が流れてる?
私は、本当にその人だったのかな?』
「…それは」
もっと通じ合っていたかった。
『…冨岡さん、人違いだよ』
雨は止みそうにない。
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いのり(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます!締めが善逸くんですいません(笑)これからも夢主ちゃんをよろしく頼みます!よかったら他の作品も応援お願いしますね! (2021年11月6日 20時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 我妻…、(何でお前が最後で締めるんだ…)?完結おめでとう…。次は、誰の書くんだ…?良かったぞ。これからも夢主と仲良くするつもりだ。冨岡義勇だ。これからも頑張ってくれ。 (2021年11月6日 15時) (レス) @page42 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - なんて言う悲しい匂いだ…。本当に人違いですかね?俺の鼻は人違いでは無いって言ってます。竈門炭治郎です。続き楽しみにしています。 (2021年10月20日 7時) (レス) @page32 id: 38350d71b2 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 釜さん» ありがとうございます!とても励みになります♪これからも応援いただけると嬉しいです! (2021年9月18日 8時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
釜(プロフ) - こんばんは!ほんわかしたお話で、描写も綺麗で好きです! (2021年9月17日 21時) (レス) id: e08aae1730 (このIDを非表示/違反報告)
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