発見 ページ31
『…』
冨岡さんを部屋のベッドに寝かせ、
私はといえばひとりで膝を抱えていた。
病院に連れて行ったりするほどの大事でもなさそうだし、
そもそも意識を失ったとかでもない。
ただ、様子がちょっとおかしかった。
怖い。
少し目を離している隙に、冨岡さんが全く知らない人になっていそうで、怖い。だから一応同じ部屋にいる。
すると、電話が鳴った。
『もしもし…』
「あ、A〜、やっほ!」
善逸だ。
やっほどころじゃない、と思う前に安心した。
変わらずにいてくれる存在が、どれほどありがたいか初めて分かる。
『うん…』
「どしたの?元気ないね」
『大丈夫だよ』
「そか。あの、この前気になったことがあってさ
調べてみたらちょっと面白いことが分かったんだよ」
『うん?』
気になったというのは、冨岡さんのことだと言う。
「俺の先祖、鬼狩りの仕事してるって言ったでしょ?
で、家にもちょっとした資料みたいなのがあるんだけどさ」
いきなりその話?
「冨岡義勇って名前の鬼狩りがいたんだよね」
自分の息が荒くなっていることに初めて気づく。
ただの偶然に決まってる。馬鹿げている。
でも、そうか。冨岡さんはもしかしたら…
「何黙ってるの?そっちの冨岡さんって、「とみ」の上に点がつかない冨岡でしょ?だったら漢字も全く同じでさ。
どっかで聞き覚えのある名前だな〜と思ったらそれだったよ」
受話器を強く耳に押し付けている。
その後も、善逸は色々教えてくれた。
鬼狩りの組織、鬼殺隊の中でも実力のある剣士たちを柱と呼ぶこと。
冨岡義勇とは、その中の一人であったこと。
更に、その代で鬼を滅ぼしたので最後の柱だということ。
だがそんなことは頭に入ってこなかった。
「…ま、だから何って話だけどね!」
善逸は最後にけろっと言い放った。
『そ…そうだね。だから何、だよね』
あの刀、刀身の根元部分に何か書いてなかったっけ…?
『でも…でももし、あの人がその鬼狩りの血を引いてて
たまたまか、わざとか知らないけど同じ名前をつけられて
その鬼狩りの記憶なんかを持っているとしたら…』
善逸は少し黙った。
私の不安は、全部伝わっているだろう。
「…でも、冨岡さんは冨岡さんだよ」
『…うん』
やっぱり、善逸がいてくれてよかった。
『ありがとう』
受話器を置いて、深呼吸をする。
冨岡さんは冨岡さんだ。きっと大丈夫。
ほとんど無理矢理言い聞かせていた。
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いのり(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます!締めが善逸くんですいません(笑)これからも夢主ちゃんをよろしく頼みます!よかったら他の作品も応援お願いしますね! (2021年11月6日 20時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 我妻…、(何でお前が最後で締めるんだ…)?完結おめでとう…。次は、誰の書くんだ…?良かったぞ。これからも夢主と仲良くするつもりだ。冨岡義勇だ。これからも頑張ってくれ。 (2021年11月6日 15時) (レス) @page42 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - なんて言う悲しい匂いだ…。本当に人違いですかね?俺の鼻は人違いでは無いって言ってます。竈門炭治郎です。続き楽しみにしています。 (2021年10月20日 7時) (レス) @page32 id: 38350d71b2 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 釜さん» ありがとうございます!とても励みになります♪これからも応援いただけると嬉しいです! (2021年9月18日 8時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
釜(プロフ) - こんばんは!ほんわかしたお話で、描写も綺麗で好きです! (2021年9月17日 21時) (レス) id: e08aae1730 (このIDを非表示/違反報告)
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