もしかして ページ13
「柏原先輩、おはようございます」
『あ、…おはよう』
じ、事務の子ー!気まずい!
絶対昨日のこと気にしてるけど、大したこと聞き出せなかったんだよなぁ…
『あ、あの、昨日言ってた…』
「あぁ、もういいです」
『え、なんで?』
「私なんて眼中にないことくらい、分かりますもん」
どこか悲しそうに笑う姿が心配だ。
あの人は感情を出すのが苦手だから好意が伝わりにくいだけだよ、大丈夫だって。
「やっぱり、柏原先輩と冨岡先輩、お似合いですよ」
『いや、本当にそういうんじゃ』
「そうですか?柏原先輩はそう思っていなくても
あっちは分かりませんよ」
言われてみれば…思い出される。
距離の近さ、ちょっと多い言葉数、緩んだ表情。
あんな冨岡さんを知ってるのって私だけ?
『なんか…ごめんね』
「いえ」
私、なんかすごい嫌な奴みたい…
よく考えると、こんなに一緒にいるのに何もないと思う方がおかしいか。
「まだ帰らないのか」
『冨岡さん…今日、残業あるの。休んでる人の分引き受けたから』
ほとんどの人が退社してしまったが
まだ冨岡さんがいるのは私を待っているからだろう。
「俺も手伝おう」
『良いよ』
「では待っている」
黙って向かいに座る冨岡さん。
『…じゃあ手伝って』
帰れと言うつもりはない、どうせ聞かないし。
いつから諦めてたかなぁ。
その時、唐突にあの子の悲しい顔が思い出されて手が止まる。
「どうした」
『…』
胸の圧迫感。
こんなことが、最初で最後だと思ったら大間違いだ。
『…やっぱ帰りなよ』
「気遣いはいい。帰っても何もない」
『そういうことじゃない。帰ってほしい』
もう、職場には私たち2人しかいなかった。
『冨岡さんさぁ、なんでずっと私といるの』
「柏原さんを護らなければならない」
『護るって、何から?絵空事言うのも大概にして』
冨岡さんにとっては絵空事なんかじゃないんだろうけど
私には、理解できないよ。
「そうだな…使命でも義務でもない。
俺の気休めで、自己満足かもしれない」
初めて会ったことを思い出す。
落ち着いた瞳が不安定に揺れる。
その奥に、何があるのかは分からない。
「…物心ついた頃から妙な夢を見る。
断片的な映像しか覚えていないが、生々しく、後味の悪い夢を」
今も時々見ると言う。
「どこかで、護るべきだった人を護れなかったんだ、きっと」
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いのり(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます!締めが善逸くんですいません(笑)これからも夢主ちゃんをよろしく頼みます!よかったら他の作品も応援お願いしますね! (2021年11月6日 20時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 我妻…、(何でお前が最後で締めるんだ…)?完結おめでとう…。次は、誰の書くんだ…?良かったぞ。これからも夢主と仲良くするつもりだ。冨岡義勇だ。これからも頑張ってくれ。 (2021年11月6日 15時) (レス) @page42 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - なんて言う悲しい匂いだ…。本当に人違いですかね?俺の鼻は人違いでは無いって言ってます。竈門炭治郎です。続き楽しみにしています。 (2021年10月20日 7時) (レス) @page32 id: 38350d71b2 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 釜さん» ありがとうございます!とても励みになります♪これからも応援いただけると嬉しいです! (2021年9月18日 8時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
釜(プロフ) - こんばんは!ほんわかしたお話で、描写も綺麗で好きです! (2021年9月17日 21時) (レス) id: e08aae1730 (このIDを非表示/違反報告)
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