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さよなら煉獄くん ページ38

「…で、他に言うことは?」

Aさんが首を傾けてこちらを見る。
一瞬思考が止まった。

『他に、言うこと…?』

「分かんないの?ちゃんと言ってもらわないと、困るんだけど」

…あぁ、そうか。
また逃げようとしていた。許してくれ、天元さん。

深呼吸をひとつ。


『好きだ』


Aさんが息をもらして笑う。

変なことは言っていない。

『俺は、Aさんを愛している』

もう一度言い切ると、彼女は溶けそうな笑みをこちらに向ける。
心が溶かされてしまいそうになる。

「私も煉獄くんが好きだよ。多分」

緩みきった表情が愛らしい。

『多分って、なんだ』

「うん?ごめん、分からない。ふわふわしすぎて。
でも多分同じ気持ち。
だってすごく、すごく嬉しいから」

『…それなら俺も嬉しい』

Aさんに抱きしめられる。

あぁ、関係は変わったんだ。
変に騒ぎだした胸を落ち着かせようとするが、それはできなかった。



「杏寿郎がお世話になりました」

「いえいえ、私たちも煉獄くんのお世話になったので」

『いや、俺がお世話になった!』

母上たちが迎えに来て
結局Aさんと天元さんは新幹線の駅まで見送りに来てくれた。

それに、

「ちょっと、いなくなるんならうちに挨拶しなさいよ」

「そうだなあ、何も言わないなんて」

偶然会った謝花兄妹もやってきた。

『すまない、お二人にもよくしてもらったな。ありがとう!』

「…まぁ、いいけど」

「元気でやれよなあ」


音楽が鳴って、新幹線が走ってくる。

「今度、そっちにも行くぜ」

『それは楽しみだな』

「煉獄くんも、会いにきてね」

『もちろんだ』

二人と抱擁を交わしてから、新幹線に乗り込んだ。
手を振ると、ぶんぶんと振り返してくれる。

扉が閉まり、プラットホームが横に流れていく。

不思議と寂しい気はしなかった。

しばしの別れだ、すぐに会える。
そんなちょっとした確信すら持っている。

兄ちゃんと煉獄くん→←特別じゃなくて



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annko(プロフ) - わわっ!いのりさん!!つ、ついに煉獄さんの口から…!!!わちゃわちゃと楽しそうに暮らしてるなぁとほのぼのしながら拝見していましたが……ついに!?次の展開が楽しみです(//∇//) (2021年8月4日 22時) (レス) id: 0cc2afaf00 (このIDを非表示/違反報告)
お酒 - 煉獄君に料理を作らせる回ww笑いが止まりませんでしたwwwww (2021年7月12日 22時) (レス) id: 48240712ac (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - annkoさん» ありがとうございますー!ガバガバご都合設定ですがお陰で書くのが楽しいです(笑)煉獄さんも宇髄の兄貴もこれからドタバタしていくのでお楽しみください(´▽`) (2021年7月3日 20時) (レス) id: db669cbc49 (このIDを非表示/違反報告)
annko(プロフ) - いのりさん、初めまして!設定が斬新で、お話も楽しくてワクワクして読ませてもらっています(^^)そして、煉獄さんが煉獄さんらしくて、カワイイ感じの部分にキュンキュンしています(*´-`)今後の展開が楽しみです!更新楽しみにしています(^^) (2021年7月3日 8時) (レス) id: 0cc2afaf00 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - お酒さん» コメントありがとうございます!そうなんです、今回はかっこいい年上煉獄さんではなくちょっと抜けてる(?)煉獄くんを書きたいなと思いました…!どうなるか分かりませんが楽しんでください♪ (2021年6月29日 22時) (レス) id: db669cbc49 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年6月29日 6時

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