うちの兄貴と居候【煉獄杏寿郎】【宇髄天元】

亀裂 ページ32

『…告白されちゃった』

「「げほっ」」

兄ちゃんと煉獄くんが一気にむせた。

『会社の人になんかいきなり好きですって…
あと、結婚を前提としたお付き合いも』

「いきなりすぎんだろ！派手に反対！」

「お、落ち着け天元さん。まずは話を…」

煉獄くんも落ち着いてない。

『OKはしてないんだけどね』

「「だけど…？」」

『断る理由も特にないっていうか』

ばたっ

「天元さん！しっかり！」

『良い人なんだよなぁ。ほら、そろそろ結婚したいじゃん』

「え、お前兄ちゃんと結婚するって言っただろ」

『残念ながら日本の法律上できないんだよね』

何が残念？

「そうか…それはよかったな。
なんだか寂しい気もするが、俺はAさんが幸せなら」

「いいわけねぇだろ。俺は派手に許さねぇ」

「…本当にそれが妹さんのためになると思うのか？」

空気が凍りつく。
煉獄くんが初めて兄ちゃんを睨んだ。

「あ？口出してくんじゃねぇよ」

「あぁ、部外者が偉そうなことを言っているのは承知だ。
でも見ていられない。Aさんの人生なのに」

『れ、煉獄くん、もういいから』

「いつの間にそんなこと言うようになった、煉獄」

どうしよう、私たちの間に亀裂が入っていく。
さっきまであんなに平和に笑いあっていたのに。

「はぁ、とりあえず、勝手に返事すんじゃねぇぞA」

兄ちゃんは不機嫌なまま出て行った。

取り残された私と煉獄くんは気まずい雰囲気のまま苦笑い。

「すまない、冷静じゃなかった」

『うちの兄こそごめん。あれも勢いで言ってるだけだから…』

ちゃんと冷静になって考え直してくれるはず。大人だし。

『ありがとう、私のために』

「いや、いいんだ。…Aさんは、俺たちのことは構わず
自分のしたいようにしてくれ。天元さんもそうしてほしいと思う」

『うん』

煉獄くんはどうしてこうも優しいかなぁ。
本当、ここに来てくれてよかった。

「でも、こういうことが初めてではないだろう」

『うーん、よく考えたら初めてかなぁ』

「よもや、Aさんほど可愛らしいと近づいてくる男が絶えないと思うが」

大げさだよ。

『可愛らしいって…私が？』

「そんな顔をしなくても。言われ慣れているだろう」

『ううーん…』

兄ちゃん以外の人からはあまり言われない。

美人だ綺麗だとは言われるけど、兄ちゃんほど人当たりも良くないし
うまく人と関わってこられなかったなぁ。

『なんか、嬉しいね』

「そうか。なら俺も嬉しい」

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