うちの兄貴と居候【煉獄杏寿郎】【宇髄天元】

ドライヤー ページ16

『あづっ、兄ちゃん自分でできるから！』

「あ？出来ねぇだろ。
兄ちゃんやってーってよく言いに来てんじゃねぇか」

いったい何年前の話？
私社会人だから。ドライヤーくらいできますから。

「本当か〜？ちゃんと乾かさねぇと髪傷むんだからな。
あと、ちゃんと髪といて」

うるさいなぁ。

隣では煉獄くんが髪を焦がして…

『れ、煉獄くん！？ストップ！』


「うむ、慣れないものでな！不甲斐なし」

『普通焦げるまでやるかなぁ』

綺麗な紅と黄の髪は思った以上に手触りがいい。
シャンプーのいい匂いがしてくる。


煉獄くんにドライヤーをあてる私にドライヤーをあてる兄。

不思議な光景が生まれてしまった。

「俺は昔美容師目指してた時期もあったからな」

「目指してそうだな」

『分かる』

美容師にいそう、兄みたいな人。

そこで少しいたずら心が芽生え
ずっと高温だったドライヤーを冷風に変えてみる。

「うおっ！？」

反応がいい。
びっくりしすぎてこっちがびっくりしてしまうくらいだ。

煉獄くんは毛を逆立てながら振り返った。なんで涙目なの。

『あはは、ごめんごめん。暑いかなって』

「お、驚いた…いきなり冷たくなったから…」

可哀想なくらいだが、ごめん、面白い。
兄ちゃんも後ろで小刻みに肩を震わせていた。


ーーーーーーー

帰りの車でも三人で他愛ない話をしていたが
明らかにAの口数は減っていた。

しばらくすると、助手席で首をこくこく動かしはじめた。

確かに風呂まで入った後に車で揺られていれば眠たくもなる。

後ろの煉獄も察したように声を潜めた。

「また外出着のまま寝てしまったな」

家に着いたら、妹を姫抱きして車からおろす。

あどけない寝顔。
起きたときにはAの疲れが消えていますように。
そう念じてみる。

『じゃ、A運んでくるから…
煉獄も寝るだろ。おやすみ』

「うむ、おやすみ」

妹を抱えたまま、彼女の部屋のドアに手をかける。

『…？』

開かない、何かがつっかかっているようだ。
部屋の掃除ちゃんとしろよ。

手も自由に動かないし無理矢理開けるのも怖いので仕方なく自室に運んだ。

「なんでAさんが」

『…今日はコイツもこの部屋で寝るから』

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