回想-目撃 ページ9
なんやかんやで私と実弥は、ただ話すだけの仲ではなくなっていた。
気心の知れた友人という感じで、一緒にいると楽だった。
全然笑わなかった実弥は、たまに笑顔を見せてくれるようにもなった。
案外可愛い笑い方をするのだなと思った。
波長かバイオリズムか、とにかくそういうのが合ったんだな。
『不死川くん不死川くん!たったらー!』
「あぁ、新刊出たのかァ、良かったな」
『ふらっと本屋さん行ったら見つけちゃったよ。
不死川くんもこの漫画好きだったよね、借したげよっか』
「俺も買ったからいいわ」
『え、嘘。流石だね』
バンドといい本といい食べ物といい、やたら趣味も合った。
実弥が勧めるものは間違いないし、私が勧めるものも間違いない。
『全部読んだ?』
「まだ途中までしか読めてねぇんだァ、ネタバレすんなよ」
『私も途中までだよ。感想共有したいから早く読もっと』
「…課題できてんのかァ?」
『あ』
俺は終わってるぜ、というドヤ顔も知り合ったばかりのときには見られなかったな。
友達の関係が変わっていったのはいつからだっけ。
先一昨年の12月はじめぐらいかな。
CDショップの前を通りかかったときに、実弥が中にいて
声をかけようかな、と思ったが
『…あ』
女の子が、実弥に話しかけた。
二人はそのまま会話を交わすと、並んで歩いて行ってしまった。
『…誰?』
あぁ、大学でも見る子だ。そういえば彼と話してたっけ。
別の女友達もつくってるんだな、私とどっちが話しやすいのかな。
いつの間に仲良くなったんだろう。どれくらいの頻度で話すのかな。
こういう子が、他にもいるのかな。
その時の私は、落胆していたみたいだ。
不思議なものだ。
なんで私が気にするんだろう、彼が色んな人と仲良くしてたっていいじゃん。むしろ良いことだし。
私の不死川くんじゃないのにな、って
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