幸せを願う【不死川実弥】 (ページ8)

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回想-ギターページ8

私は、実弥は普通にモテるんじゃないかと思っていた。

だってあそこまで真面目でしっかりしてて気も遣える人なかなかいない。
背も高いし筋肉もあるしかっこいいじゃないか。

とまるで私が育てたかのように言うが

「いや、実際そうでもないんですよ津城さん」

『玄弥くん、お姉ちゃんと呼んでくれてもいいんだよ』

「それはちょっと」

よし、そろそろ本当に不審者なので控えよう。

「本人が言わないだけかも知れないんですけど、兄貴の浮ついた話を今までひとつも聞いたことがなくて」

『へぇ…』

「興味がないみたいで…ってか兄貴、とにかく恋愛に疎いんすよ」

『…玄弥くん、うしろうしろ』

「誰が何に疎いんだァ？」

「ぎゃっ」

口から心臓がまろびでるくらい驚く玄弥くん。

「あんまり余計なこと喋んなよ」

「ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ」

うーん、本人に興味はないにしても、実弥を好きになる子はいたんじゃないかな。
これは今も当時の私も思うことで
ほら、顔だってちゃんと見たらすごく整っているのが分かる。

「…津城？」

『うん？あ、ごめん、なんだっけ』

「何も言ってねェよ。お前こそ、なんか用でもあんのかァ」

『ううん、なんでもない！ごめんね！』

またまじまじ見てしまった…駄目だなあ。

そんな私たちを見比べる玄弥くん…。

『不死川くんてギター弾くの？』

お部屋の隅にあるアコースティックギター。

「あぁ、これなァ。一時期やってみようと思ったんだが、三日坊主で終わっちまってよ。音階くらいしか弾けねェ」

「俺たち兄弟みーんな挑戦したんだけど、みんな才能無かったんだよね」

『へぇ。私もやってるんだよ』

曲も少し弾ける、というと実弥たちは目をきらきらさせた。

『ではお聴きください～』

ほんとに趣味の範囲で練習していただけだが、不死川家では好評だった。
調子に乗って弾き語ったりした。

「すげェな」

少年のような瞳を向ける実弥は新鮮だった。

『まだ弾き語りは難しいけどね。こんなにウケると思わなかった。
みんなにも教えてあげるよ！』

「ほんと？」

「A姉ちゃん先生だ！」

「A先生～！」

『ははは、くるしゅうない』

「喜び方がおかしいんだよなァ…」

そういえば実弥は私の弾くギターが好きだったなあ。
今はギターなんて何ヶ月弾いてないかな。