幸せを ページ42
「A、さっきから何笑ってんだよ」
『だって、こんな時までそんなに前開けてるとかさ。
面白すぎない?みんな絶句してたよ』
「これがいい」
前開けに対する謎のこだわりはいったいなんなんだろう。
『…ドレスは、どうかな』
「あぁ、すっげえ綺麗」
目を細める実弥。
顔がむず痒くなる。
『でもすごい落ち着かない!はやく脱ぎたい。脱ぎたくないけど』
「なんで照れてんだよ」
『照れてないし』
「俺は一生見てられるけどなァ…割と本気で天使だと思った」
いつの間にそんなことサラッと言える男になったんだろう。末恐ろしい。
『実弥も世界一かっこいいよ』
「そりゃ良かったなァ」
「はいはいそこの新郎新婦〜!
ふたりの世界に入ってないで写真撮るよ!」
『はーい』
今日だけでたくさんおめでとうって言われたな。
式はあっという間に閉会。
両親への手紙も泣きそうになりながら読みきった。
『私、不死川になるのか…いかつい!』
「不死川A、なかなか似合ってんじゃねぇか」
『まぁね』
「…A」
『ん?』
「泣くの我慢すんなよ」
その一言で、溜め込んでいたものが込み上げてきた。
『うっ、私は幸せです!』
「おい、服は濡らすなァ…
こうなると思ってハンカチ用意してたからよ、使え」
『実弥ぃい…!』
最高に優しい。あとかっこいい。こんな人が、今日から私の夫だ。
「あーあー、ハンカチじゃ足りねえかもな」
『幸せすぎて』
全部実弥のおかげだね。
うん、本当に実弥とじゃなきゃ幸せになれなかったんじゃないかな。
長いことすれ違ってたけど、今があるためには全部必要だったのかもしれない。
『人生捨てたもんじゃないね』
「老けたこと言うんじゃねぇよ、これからだろ」
『でも本当にそう思うんだよ。
捨てたもんじゃないどころじゃないよね。人生万歳!』
真面目な顔で言う私を実弥は嬉しそうに見る。
「…俺のどこが好きか言ってみろよ」
『実弥もそういうの聞きたいんだ。いいよ』
指折り数えてみる。
『まず顔がいい』
「おい」
『声もいい』
「待て」
『ガタイもいい』
「A」
怒らないでよ、照れ隠しじゃん。
『うーん、
私を幸せにしてくれるとこ!』
「…そうだなァ」
幸せって何かよく分からない。
けど、今は間違いなく幸せだし、これからもずっと幸せだって確信できる。
私、貴方と幸せになるよ。
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