こたえ ページ41
バス停で会った。
実弥がここに来るなんていつぶりだろうか。
『おはよー』
「はよ」
あぁ、そわそわする。
期待しすぎたらあとが怖いから何も言わないけど。
「…A」
『ん?』
実弥は首をほとんど動かさず目だけで私を見た。
「手、出せ」
『はい』
右手を差し出す。
「そっちじゃねェ」
いったいなんなんだ、と逆の手を出した。
「言葉にすんのはどうも苦手でよ」
そう言って手を動かす実弥。
「案外合うもんだなァ」
『…ん?』
左手の薬指に、光る物があった。
『これ』
「や、これは適当に家から持ってきた安物だからよ…
ちゃんとしたやつは、また今度一緒に、な」
ちゃんとしたやつって…
どうしよう、私の勘違いじゃないよね。
『えっ、ごめんごめん。いやごめんって意味じゃなくて!』
「落ち着け」
落ち着くなんてできるだろうか。夢でも見てるんじゃないかとすら思うのに。
私の左手を、するっと実弥が撫でた。
「…こんな小さい手ぇしてたかァ」
私の手は簡単に実弥の手に覆われてしまった。
彼はもどかしげに頭を掻く。
それから、息を吸って、言った。
「俺と…幸せになってくれ」
『…はい』
指を絡めて掲げた。
『喜んで』
それから、どちらともなく口付けを交わす…前にバスが来た。
「『間が悪い』」
半ば本気でバスこの野郎とか思って
公衆の面前で見つめあっていた私たちも私たちか、と思い至る。
まだ手は繋いだままで。
なのに別に何もありませんよという顔をするお互いが面白くて吹き出してしまう。
『これ、着いても付けたままでいいよね』
「まぁ…」
ぱたぱたと足を動かしてしまう。
私って単純だ。
『結婚しました!って言っちゃおうか』
「それは勘弁しろ」
実弥が笑う。
やっぱり大好きな笑顔。
左手を窓に透かすと、指輪が眩しく光った。
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