幸せを願う【不死川実弥】 (ページ5)

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回想-買い物ページ5

私たちはずっと一緒にいるわけでもなかった。

当然その必要もないし
お互い別の友人はいるし。

でも、いちばんのご近所さんだったもので
とにかくばったり会うことは多かった。

あの日は一人暮らしの私の家にお父さんとお母さんが来て餃子を食べようということになったのだ。
美味しかったな。

しかしちょうど餃子のタレを切らしており、スーパーに買いに走っていた。

行きつけのお店なのでだいたい配置は分かるけど
そういえば餃子のタレは最上段に居たな…

私の身長は人並み以下。
そしてこのスーパーは他に比べて明らかに商品棚が高い。
訴えても良いレベル…かもしれない。

とりあえず、こういうときに不便なもので
私は背伸びして取ろうと思うわけだが

「餃子にすんのかァ」

『うん…って』

聞き覚えのある声につい返事をしてしまう。

振り向くと額に軽くコツンと何かがぶつかるのを感じて、
実弥が取ってくれたんだなと分かった。

『ありがとう、不死川くん』

なぜ人のおでこでワンクッション置いたのか分からないが
ん、と無愛想にタレを押し付けてくる。
無愛想だけど、これでも表情は柔らかい方だ。機嫌良いのかな。

『不死川くんのとこ…量すごいね』

「うちは兄弟多いからなァ」

その上育ち盛りなのか知らないがよく食べるらしい。

「ちびっ子どもは連れて来たら走り回るからよォ…」

元気に駆け回る弟と妹をあわあわ追いかける実弥の姿が浮かんだ。
なるほど、大変だ。

それから家族の話を聞かせてくれた。

もちろんむすっとしているが機嫌が良いのは雰囲気でわかる。

『いいお兄さんしてそうだね』

「…んなこと無ェよ。しょっちゅう喧嘩するし」

特にいちばん歳の近い弟くんとはよく言い合いになるそうだ。
さっきも一緒に行きたがった弟に、そんなことはいいから勉強しろと言ったら軽く口論になったらしい。

『勉強とか言うんだね』

「あいつが不真面目なだけだよ」

いや、たぶん実弥が真面目すぎる。弟くんも可哀想なものだ。
でも一緒に買い物に行きたがるあたり関係は良好そうなのでやっぱりいいお兄ちゃんしてるんだろうなぁと思った。

程なくして彼のきょうだいとも顔を合わせることになる。