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現在-救済 ページ40

「実弥はもっと正直に生きていいと思うよ」

Aには心の中が見えるのかと思った。

心の膜を一枚ずつぺりぺり剥がされて
中にあるものをごっそり抜き取られるような感覚に陥った。

全部分かってたのかよ。

じゃあ俺はどうなんだよ。本気でダサいじゃねぇか。

彼女が隣にいなくても、どこか遠いところで幸せならそれで良かった。

ただ純粋にAの幸せだけを願っていた。
自分まで騙したつもりで。

「実弥とじゃなきゃ幸せになれないよ。
だったら幸せにしてくれる?」

知ったこっちゃない。

どうしてそこまで俺がいいのか先に教えてほしい。

『…俺は、』

言葉を探す。
が、頭の中のどの辞書も固く閉じられていて開けない。

『…』

あぁ、なんか腹立ってきた。

人の気も知らないで、ってか全部知った上でよくも言えたものだ。

こちとらずっとお前のことだけでいっぱいだった。
こんなことになるくらい、好きだったんだよ。

「!?」

彼女の胸ぐらを掴んだ。

突然のことにAの目が大きく開く。


乱暴に口付けを落とした。

『…』

「…」

唇を離し、手を開くとAの踵がすとんと落ちた。

『あー…どうしてくれんだ』

「どうしようか」

お互い頭の中が空っぽになった。
そんな不思議な顔すんなよ、俺にも分かんねぇって。

「あの、もう一回だけ」

『は?無しだわ』

後頭部に手がまわってきてまた唇が重ねられる。
話聞けよ。

「うーん、もう一回」

両手で肩を掴んで止める。
こいつ、頭まわってねぇな。

『…なぁ、A』

「うん?」

『明日また話せるか?』

「…うん!」



いつかとは逆だな。

ああ、落ち着かない。どうして勢いに任せてあんなこと。

…あの時のあいつもこんな感じだったんだろうか。

「実弥兄ちゃんどうしたの?」

「さぁ…最近の兄ちゃん面白いよな」

長男の威厳はどこへ行ったのか。
いや、情けねぇよな本当。

「ありがとう」も「悪かった」も。

…あと、「好き」も。

俺だって言いたかった。
全部言われてしまった。

なのに不思議と心は軽かった。

Aは情けない自分から俺を救ってくれたんだと今更気づく。

「兄ちゃんスッキリした顔してるね」

「長いこと悩んでたみたいだから」

弟は晴れやかに笑った。

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年6月7日 19時

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