現在-最後の ページ39
自分から言っておいてなんだが、まさか聞いてくれるとは思わなかった。
いや、でもこれで最後ってことだしちゃんと言わないと。
…台本書いときゃよかった。
『あ、あの。実弥のことずっと好きだよ』
怪訝な顔をされる。
『本当に、いちばん言いたかったの。ちゃんと言えなかったから。
だから実弥とずっといたいんだよって。
一瞬も実弥を好きじゃない時なんて無かったよ』
まだ変な顔をしている。
ちゃんと伝わってると思うんだけどな。
『だからありがとう。あと、ごめんなさい』
「何が」
『実弥のこと、これからもずっと忘れない。
この先別の人を好きになったって一生覚えてる。
勝手に思い出しちゃうけど許してね』
「勝手だろ」
だんだん別れの挨拶っぽくなってきた。
実質そうなのか。
『うん、たくさん言いたいことはあるけどこれが全部だよ。
聞いてくれてありがとう』
「…」
話はこれで終わりじゃないよ。
『実弥のことも聞かせてくれないかな』
「なんでだよ」
『私のことどう思ってるかくらいは』
「なんとも思ってねぇよ」
『ごめん、実弥の嘘は分かる』
「は?」
めんどくさいこと言ってごめん。
でも本音が聞きたいよ。
『じゃあ私が言うけどね、実弥は私のこと好きだよね』
「は」
『正直分かりやすいっていうか…うん、誰から見ても分かると思うんだけどさ』
「いや、違」
『実弥は私がいなくてもいい?』
「あぁ」
『私がどっかで幸せにしてたらそれでいいんでしょ』
「…」
あの時も、今もそれしか考えていないんだろう。
「意味分かんねェ」
『私は実弥とじゃなきゃ幸せになれないよ』
「んなことねぇよ」
『そんなことがあるとしたら、幸せにしてくれる?』
実弥はどんどん苦々しい顔つきになる。
『ここまで知ってるのにごめん。
けど、実弥はもっと正直に生きていいと思うよ』
「なんでお前に」
説教されなきゃいけないんだってね。私もそう思う。
けどそうやって、自分から大事なものを遠ざけて護った気になるのって馬鹿みたいだよ、正直言って。
うん、実弥ときたら本当に馬鹿だ。
『だからお願い、嘘はつかないで。それだけでいいよ』
それだけが私の願いだ。
大好きな人に、心から笑ってほしいから。
「…俺は、」
絞り出した声を聞き逃さないように、耳を傾けた。
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