現在-手紙 ページ37
あんなことがあったものの無視されつづけ約2週間。
がんばってる私。
なんというか、あそこまで嫌な対応されたことないからこれはこれで新鮮で良いやとか変態じみたことを考えている。
…うん、強がりだな。
本音を言うとだいぶ辛い。
実弥が明らかに無理をしているから。
そう、私なんかより実弥の方が何倍も辛いに決まってる。
『…そうだ』
話を聞いてもらえないのなら手紙を書けば良いのでは?
LINEとかしても絶対見てもらえないし。
そろそろこれくらいしか手はない。
よし、そうと決まったらはやく書こう。
ーーーーーーー
Aがここまでめげないとは知らなかった。
もう少し脆くなかったか、あいつ。よく泣くし。
『良い加減にしてくれェ…』
家のポストにはピザ屋のチラシとか地元の祭りの案内とか。
大体そういう適当なものが入っているのだが
『!?』
小さな封筒。手書きのうさぎのキャラクターが描かれている。
『……』
そろそろあいつが分からない。
あたりを見回した。
彼女がこの様子を見ている可能性があるのなら破り捨てるのに。
「あれ、兄ちゃん早かったね」
『お、おう玄弥ァ』
「どうしたの、挙動不審だな」
『なんでもねぇよ』
結局家の中…俺の部屋まで持ってきてしまった。
『…クソッ』
いや、これは中身確認だから。
あいつに取り合うつもりはねぇぞ、分かってんのか俺。
気づけば深呼吸をしている。
ゆっくり、ゆっくり中の紙を開いた。
角のない字が懐かしい。
少し癖字が直ってきているんじゃないだろうか。
そんなことより、てっきりつらつらと書かれているものだと思っていたからたった二行の文面は衝撃的だった。
「私の本持ってないですか?
A」
気の抜けた内容だったが俺の余裕を崩すのには充分すぎた。
元から余裕なんてないんだが。
『嘘だろおい』
Aの家にあった自分の物は回収済みだし
俺の家にあるAの物だって返した…つもりだった。
本棚に張り付くようにして中の物を掻き出す。
『あー…どうすっかな』
Aに借りた本は確かにそこにあった。
あまり活字は得意じゃないと言うと借してくれたやつだ。
やっぱり得意じゃないものは得意じゃなくて全然読めないでいると彼女はずっと持ってていいよと言った。
ずっと持ってていいよはあげるという意味ではないらしい。
そりゃそうか。
『…やべェな』
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