再開 ページ34
『やり直そう、実弥』
わざと冷静を装って言う。
「今日は快晴だね」とでも言うみたいに。
「…やり直すって、なんのことだァ」
実弥も天気の話を返すように言ったつもりかもしれないが
動揺しているのがなんとなく分かる。
というか、大真面目にとぼけてるのが可笑しい。
『じゃあやり直さなくていいから、付き合おう』
「…」
今回こそ夢じゃないかと思っている顔だ。
「それはできねェな」
『そっか』
断られるとは思ってた。
『実弥と別れてからあんまり楽しくなくてね』
「…」
『実弥に会えたら嬉しいけど、そんなこともう言えないでしょ。
嬉しいことを素直に嬉しいって言えないのって虚しいんだよ』
こうして正直に話せているだけでも嬉しいんだ、正直。
『実弥を思い出したら悲しいよ。
だから、好きだった音楽も聴けなくなっちゃった。
漫画も読めなくなった』
「俺のせいかよ」
『うん。
…どうだろう、また一緒になってくれないかな』
「だったらよ」
いきなり実弥の声が刺々しくなった。
肩が小さく震える。
「とっとと忘れろよ、俺のことなんて」
『…』
忘れられないから言ってるんだよ。
なんなんだよ、
実弥は心底イラついたように口の中で言った。
「縋られても迷惑だァ…
もうこんな話二度とすんな」
睨まれて身が竦んでしまう。
実弥はそう言い残すと振り返りもせず歩き出した。
『待って』
早足で、大股で。
ここで行かせてしまったらもう会えない気がした。
でも背中はどんどん離れていく。
本気で走られたら追いつけるわけないじゃん。
『実弥…っ!』
何もないところで足がもつれて転んだ。
焦りと絶望が耳の奥を掻き回す。
実弥が足を止めて少し振り返った。
その瞬間涙が溢れた。
こんなときですら心配するなんて。
『馬鹿』
突き離すのが下手すぎるよ。
膝の痛みなんて気づかないまま、私はただ前方を睨んでいた。
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