空白-おはようの声 ページ28
着信音で目が覚めた。
『ん…んん!?』
時間を見るともうお昼。授業サボっちゃった…
友達が心配してかけてきてんのかなぁと思ったら
『実弥…なんで?まだ夢?』
夢なら夢で面白いか。出てみよう。
『もしもーし』
「おう…落ち着いてんなァ」
『わ、ほんとに実弥だ』
やっぱり夢かな。
「お前、着信の音で起きただろォ」
『なんで分かるの』
「その声とテンションは寝起き」
実弥は私の寝起きも知ってるんだね。
私も知ってるけど。
寝起きの実弥はいつにも増して目つきが悪いよ。
でも雰囲気は柔らかい。あくびは人前では噛み殺すタイプ。
『で、なんで実弥が?』
「お前の友達が心配してよ、俺に電話しろって頼んできてなァ」
『じゃあ友達が電話すればいいのに』
「携帯の充電切れてたらしいわ。まぁなんでよりによって俺って話なんだけどな」
あの子、ひょっとして妙な気を利かせたのか?
みんなお節介だなあ…
「じゃあ只の寝坊なんだな」
『うん。迷惑かけました』
まだあくびが込み上げてくる。我ながらだらしない。
「全くだぜ」
…はっ、今がチャンスなのでは。
切ろうとする実弥を呼び止めた。
『実弥。昨日はごめんね』
「あ?…気にすんなァ」
『あと、ありがとう』
実弥が言葉に詰まったのが伝わる。
『昨日も、今日もね。助けられてばっかり』
しばらく沈黙が続く。
「…いらねぇよ、礼とか。
お前のためとか心配とか微塵もねェから。
変な勘違いすんな」
そのままぶつっと電話が切られた。
『…ふふっ、変な勘違いって、何』
起きていちばんに実弥の声が聞けるなら寝坊も悪くない…って
すっかり幸せモードに入ってしまった。
いや、もうそういう仲じゃないけど。
そうは思うものの喧嘩が後を引かなくてよかった
好きな人に嫌われるのはやっぱり辛い。
…別に未練があるとかじゃないよ。
ただ、まだ好きって気持ちが消えないだけだから。
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