幸せを願う【不死川実弥】

空白-即発 ページ27

実弥が言い寄られている。

案外狙ってた子多かったのかもね。モテますこと。

つまらなそうな顔の実弥と目が合う。
同時に顔をふいっと背けた。

「不死川ってモテるんだな」

『えっ、そ、そうだね』

突然男の人に話しかけられた。
大学でたまに顔を合わせるくらいの人。

「別れたって聞いたけど…もしかして浮気された？」

『違います。あの人浮気とかしないし』

ずいぶん無神経というか、失礼な奴だ。

「ごめんごめん。でも、大変だよな津城さん
…Aちゃんって呼んでいい？」

『はぁ、いいですけど』

なんか強引だし距離近いな…

「なぁ憂さ晴らしに遊びに行かね？楽しいよ」

なんだこのずさんな誘いは。
失恋で傷心中の女は簡単に落ちるとでも？

『うーん、そうだね…行けたら…』

「やった、どこ行く？いつにしようか？」

『さ、さあ。てかその、二人…？』

「当たり前じゃね？」

何が当たり前なんだろうか。
困ったな、普通に嫌ですって言った方がいいかな。

『あの…』

「なに？いつなら空いてる？」


「お前のために空けとく日はねェよ」


私が言葉を発する前に背後から声がした。

「っていう顔してんの分かんねェのか？」

『さ、実弥』

なんで絡んでくるの、後ろで女の子が睨んでるじゃん。

「なんだよお前。Aちゃん振ったんだろ」

一気に修羅場っぽくなってしまった。

「振ったっつーか、円満破局」

『そんな言葉はない』

更に言うなら円満でもない。

「昔の男が関わってくんなよ」

「助言してやんだよ。こんなあからさまに嫌な顔してんのも気づけねェお前に女が落とせるかってなァ」

『実弥にだけはそういう助言されたくないと思う』

「さっきからうるせェな」

なぜか私たちが睨みあう形になった。

『いきなり顔突っ込んでごちゃごちゃ言って、うるさいのはそっちじゃない？』

「あ？お前が情けねぇから助けに来てやったんだろうがァ」

『いつからそんな偉そうになったの？女の子まではべらせて』

「お前こそ、いつからそんな生意気な口しか聞かねぇようになったんだァ」

いかにも険悪な雰囲気を醸し出す私たちにざわつく周囲。
どんどん激しくなる言い合いは
うまくいってなかったあの時となんら変わらなかった。

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