空白-弟 ページ26
「…あ、ども」
『どうも』
久しぶりだね、玄弥くん。
また少し背が伸びたような彼は、兄の元恋人という微妙な関係の私にどう接するか決めかねていたようだが、こちらに小走りで寄ってきた。
「…兄貴がお世話になってます」
吹き出してしまう。
『何それ嫌味?』
「えっいや、すいません。その、兄貴のことで話したくて…」
深刻そうな顔だった。
「そんじゃ、兄貴から言い出して、津城さんは嫌がったんですね」
『うん』
「…なんで」
『どうしたの?』
「なんで別れようなんて思ったんですかね…」
それを私に聞くなんて面白い子だ。
『上手くいかなかったからでしょ。相性悪かったんじゃない?』
納得のいっていなさそうな顔だ。
「それで、すっきりしたんですか」
正直に答えれば、私は全然だけど。
『…そこそこ』
「兄貴、怖いんすよ」
『確かに』
「よく叱られるしきつく当たられるし
一時期本当に嫌いだったし」
『反抗期だね』
まぁそうもなるだろう。当然のことではある。
「今もあんまり変わらないんですけどね。
決して嫌われてるわけではないんですよね」
『そう思うよ』
「津城さんが羨ましいです」
『…なんで?』
話がいきなり飛んだ。
「兄貴のこと全部分かってるから。
弟の俺でも分かんなかったのに」
『分かってないよ』
「勝手にお似合いだと思ってました」
『私もそう思ってた』
自惚れてたのかもしれないよ。
でも私たち、なかなか良かったんじゃないかな。
「Aさんさえ良ければ、兄貴を頼みます。
ほぼ俺のわがままだけど…」
『頼むって』
元カノに何を。
「兄貴のやつ、そういうとこはなんていうか…馬鹿だから」
『玄弥くんが馬鹿って言ってたって伝えとくね』
「勘弁してください」
やっぱり兄弟だな。
笑い方とか似てる。
『ありがとう…でもごめん、あんまり期待しないで』
「いや、こっちこそ変なこと言ってすんません」
『いいよいいよ。肉まん奢ってあげようか?』
「なんでそうなるんですか」
歳下に世話を焼きたくなる病だ。
頭とか撫でたくなるがやめておく。
『玄弥くんも女の子には気をつけなね』
「ほ、ほっといてください!」
28人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ