幸せを願う【不死川実弥】 (ページ23)

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回想-病気ページ23

そのあと取り乱した私を実弥はなだめた。

あの時の私は駄々をこねる子供みたいだった。

実弥はずっと優しく諭してくれた。
物分かりのいい大人みたいに。

『…そんなこと言うならもう帰らないで』

背中にくっついて、彼の体を腕の中に閉じ込めた。

『終わりになんてしないで…好きだよ、実弥』

今日だけで何回好きだと言っただろう。
昨日も一昨日もその前も、全然言わなかったのに。

「A、俺の気持ちはもう終わってる。
…お前のことなんて好きじゃねェ」

腕の力が抜ける。

実弥は振り返ることなく帰っていった。

『…馬鹿』

声が震えてたよ。
分かりやすい嘘つかないでよ。

馬鹿、ほんとに馬鹿。

我慢していた涙が一粒床に落ちると、

たがが外れたように次から次へと頬を温かいものがつたった。

あいつ、せっかく人が茶を出してやったのに
一口も飲まなかったのか。

わざわざ沸かすこともないかと冷めたお茶を出した私が言うことでもないけど。

マグカップを持ち上げぐいっと緑茶を飲み干す。
こんなに味がしないものだっけ。

頭を空っぽにしようとカップを洗うが、そんなことで気が紛れるはずもなく

『なんで…なんなの、もう』

鼻の奥がつんとして、また勝手に涙が出てくる。
視界がぼやけて無性にいらついた。

そのあとも、何をしていても泣いてしまって

涙脆い私を笑う姿が脳裏に浮かんですぐ消した。

ああこれは何かの病気だな。涙腺が正常に機能してない。

だったら明日の朝には治っているように、涙を流し尽くそうと思った。
実際尽きることはなかったけど。

どうにか落ち着いたときには痙攣がひどく、息も絶え絶えという感じで。

床が少しばかり浸かっていてもおかしくなかったんだけどな。

とりあえず、そのまま床に突っ伏して寝た。
すごくぐっすり眠れた気がする。
だからかな、さっぱり起きれたんだな。

目が覚めて全部夢ってことになってたら最高だったけど。

とりあえずもう勝手に涙が落ちることはなかったから
少しだけ安心して家を出た。