回想-初めての ページ21
『じゃじゃーん!これが私のギターだぜ!』
「おぉ」
自慢げにギターを見せる私と目を奪われる実弥。
ふたりともギターの銘柄も年代も何も分からないし、多分これはごく普通のギターだ。
おじいちゃんにもらったやつだから、ひょっとしたらアンティーク…いや、違うと思う。
『やっぱりこれが弾きやすいんだよーじゃかじゃか♪』
「かっけえ…」
『らららーエレキギターが欲しい♪』
「なんつー歌歌ってんだァ」
コントはその辺にしておいて
実弥にギターを教える約束をしていたんだった。
『…ちょっと、成長速すぎない?』
「怒んなよ」
『怒ってないよ』
「顔が怒ってんだろ」
『元からこういう顔でーす』
だってだって、実弥覚えるの早すぎるし!
教え甲斐なさすぎるでしょ!
「いつももっと可愛い顔してる」
『してない…ちょっと、近い』
つい顔を背けてしまう。
と、
『…実弥、あれ何?』
机の上にちょこんと置かれたかわいい子熊。
実弥の趣味じゃない。
「あぁ、勉強教えたお礼にってもらった」
『…あ』
またあの子か…
そうかそうか、自分の子熊を彼の部屋に飾ってもらってさぞかし嬉しいことだろう。
「A?」
『あ、うん、なんでもないよ』
誤魔化しきれなかったようで、実弥は怪訝な顔でこちらを見た。
「最近なんか隠してるよなァ」
『別に…』
「目が泳いでんぞ」
なんでこんなとこだけ勘がいいかな…
私が分かりやすすぎるだけか。
『実弥、最近他の女の子とばっかり居るから…』
「ばっかりじゃねェだろ」
『ほら、聞いたら聞いたでそんなこと言うじゃん』
口を尖らせてしまう。
「…お前との時間は大事にしてたし、一番優先してた」
『それは、そうだけど…』
「まだ納得いかねェか?」
納得するべきなんだろうけど、それって今までと変わらないってことじゃん。
『…』
「黙ってたら分かんねェよ」
唐突に思い出す。
私だけを見るって約束してほしい。私から離れないって思わせてほしい。
そう言ったら、前付き合ってた人は離れていった。
『分かってよ…彼氏ならさ、考えてよ』
「んだよそれ、俺が何も考えてねェと思ってんのか?
…ふざけんな、俺がどんだけAのこと…」
『だったらさ
実弥は私のこと何も分かってないじゃん』
思った以上に響いた刺々しい私の声。
何かが壊れた気がした。
付き合って半年とちょっと。
これが初めての真面目な喧嘩。
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